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2.共創型芸術の定義

2−1 共創型芸術

共創型芸術とは「芸術家と一般の人々が共同でつくる創造的な芸術表現、芸術活動」を指す言葉である。芸術作品の鑑賞にはいくつかの形式があり、体験型芸術や参加型芸術と呼ばれている。メディアアートにおける鑑賞者が作品を直接的に体験するインタラクティブな作品は体験型芸術と呼ばれ、鑑賞者が芸術家や作品制作に直接関わることで鑑賞する作品は参加型芸術と呼ばれている。共創型芸術とはこうした体験や参加をさらに進め、芸術家と鑑賞者がいっしょに深く関わって作品や状況を創造する芸術表現を指す概念として筆者がつくった造語である。

芸術の鑑賞形式には4段階ある。先ず、絵画や彫刻を鑑賞者が作品から離れて鑑賞する観察型。次に作品に触れたり操作したりして体験的に鑑賞する体験型。作品制作やパフォーマンスに直接加わり鑑賞する参加型。そして芸術家といっしょに作品制作やイベントづくりを行う共創型である。段階をおって鑑賞者と作品、芸術家との距離は縮まっていく。それは芸術の制作形式の新たな段階の成立を意味している。芸術の制作形式も4段階あると考えられる。先ず作品を芸術家が一人で制作する独創型。次に複数の芸術家が共同制作する連携型。芸術家が職人やスタッフを指揮して制作する工房型。そして芸術家が一般の人々と共同で制作する共創型である。この様に、共創型芸術は鑑賞と制作が交差した場に成立する芸術表現である。なお、これを図で示したものが図1である。

図1 制作と鑑賞の交差する場

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図1 制作と鑑賞の交差する場

2−2 共創型芸術の定義に関する補足

2−2−1 芸術

芸術にはさまざまなジャンルが存在する。音楽、舞踊、文学、詩など、その表現形式は多様である。本研究では美術および美術に関連する芸術表現に絞って研究考察を進める。これはアートワークショップ、アートプロジェクトの多くが美術を中心にしたものであるためである。ただし共創型芸術の概念は、芸術一般に通用する普遍的概念であると考えている。

2−2−2 芸術家

芸術家とは芸術に関する専門的知識、経験を有する表現者である。共創型芸術は芸術家が直接関わる活動であり、芸術家による芸術表現の一形式である。そのため芸術表現の根幹は他の芸術表現と同様、芸術家の内発的表現欲求である。それが、参加者の表現欲求や興味関心を強く喚起し、一定の方向へ導き、芸術的創造を生成させるのである。ワークショップではしばしばファシリテーターと呼ばれる参加者の制作をサポートする人が重要な役割を担う。共創型芸術における芸術家は、従来の芸術家としての構想力と、参加者の意欲を喚起し制作をサポートするファシリテーターとしての行動力、そして参加者と共振しながら「場」の創造性を発揚していく柔軟な実践力を必要とするのである。

2−2−3 一般の人々

一般の人々とは芸術家以外の専門的知識、経験を持たない人々を指している。子供、高齢者、障害者など、アートワークショップやアートプロジェクトに参加する幅広い人々のことである。なお、この一般の人々と芸術家という分類を行うと、そのどちらのカテゴリーにも入らない人々が発生する。芸術家以外の専門的知識、経験を持つ人々である。具体的には美術館学芸員、教師、アート系NPOスタッフ、批評家などである。こうした人々も共創型芸術の実現に深く関わっているが本稿では議論を明確にするため、詳しくは取り上げないものとする。

2−2−4 大規模なアートプロジェクトについて

近年、各地で実施されているアートプロジェクトの中には自治体などが主催する大規模なものも存在する。こうしたアートプロジェクトの多くは、小規模なプロジェクトやワークショップがたくさん集まり、組織的に運営されているものであると捉えることができる。こうした大規模なものも本質的には共創型芸術の一形態であると考えている。ただ、大規模になると運営や事業目的などが芸術家個人や小規模なグループの活動とは異なってくる部分も多い。議論を明確にするため本稿においては詳しく取り上げないものとする。

    

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