研究ノート|STUDY NOTEBOOK

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プロセスを重視した共同制作による芸術表現の研究 ―共創型芸術の可能性―

Research of the art by joint production that values production process
― Possibility of Joint creation art by artist and people ―


谷口 文保

TANIGUCHI, Fumiyasu Assistant Professor, Department of Plastic Arts, School of Progressive Arts



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はじめに

1990年代からアートワークショップやアートプロジェクトなど制作プロセスを芸術表現として重視する活動が盛んになってきた。(*1)近年では、こうした芸術表現は地域づくりや環境教育など社会政策と連携しながら全国各地で多数展開されている。

アートワークショップやアートプロジェクトが従来の芸術表現ともっとも異なる点は、作品制作のプロセスにある。芸術家と一般の人々が一緒になって制作する芸術表現であるという点がこうした活動の特性であると言える。そこでは「芸術家が制作し、観客が鑑賞する」という従来の役割分担は意図的にくずされている。専門的知識や経験を持たなくても参加、制作可能な芸術活動は幅広い人々から支持され、ひろく芸術を魅力的な社会活動として認識させることにつながった。まちづくりや社会福祉など社会政策上の目的を達成するための新しい手法として、芸術との連携が芸術以外の分野から注目されるようになってきている。(*2)

近年注目され始めているこうした芸術の社会政策上の価値は、実社会を舞台に芸術家が地域の人々と直接深く関わるようになったことで結果として発生してきたものである。今後の発展によっては芸術概念を大きく拡張し、その根幹を変容させてしまう可能性すらあるこうした活動についての研究は、社会と芸術の発展を目指す上で今後ますます重要になっていくと予想される。

本稿はアートワークショップやアートプロジェクトの研究を進めるための基礎となる構想をまとめた研究ノートである。私はこれまで芸術家としてアートワークショップやアートプロジェクトを多数実践してきた。(*3)本稿は、こうした実践から得られた経験に基づいて、アートワークショップやアートプロジェクトが「プロセスを重視した共同制作による芸術表現」であるという点に注目して考察し、まとめることを試みるものである。

    

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橋本敏子『地域の力とアートエネルギー』学陽書房、1997年、20−24頁
工藤安代『パブリックアート政策』勁草書房、2008年、10−12頁
谷口文保「地域社会とアートの関係について −アートワークショップの現場から−」『地域とアートのコラボレーション 事例研究』環境芸術学会第8回実行委員会編、環境芸術学会、2007年、24−27頁