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図35 (上)鞆の風景(引用:シーボルト,『日本』図録第2巻 II第19図*1) (下)鞆の風景(撮影:木下怜子,2007/8/23)

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図35 (上)鞆の風景
(引用:シーボルト,『日本』図録第2巻 II第19図*1)
(下)鞆の風景
(撮影:木下怜子,2007/8/23)


図36 (上)牛ヶ首崎から瀬戸内海を望む(引用:シーボルト,『日本』図録第2巻 II第19図*1) (下)牛ヶ首崎沖から瀬戸内海を望む(撮影:木下怜子,2007/8/24)

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図36 (上)牛ヶ首崎から瀬戸内海を望む
(引用:シーボルト,『日本』図録第2巻 II第19図*1)
(下)牛ヶ首崎沖から瀬戸内海を望む
(撮影:木下怜子,2007/8/24)

4.研究のまとめ

4−1 瀬戸内沿海域の景観が持つ固有価値の再評価

本研究の成果として、次の3項目を瀬戸内沿海景観の現状として結論づける。

1――. 自然地形や社寺仏閣といった、海域側からの景観の「核(目標)」となる要素が、シーボルトらの体験記録と変わらず生きつづけている場所がある一方で、それらが、陸域側からの視点で開発された橋や車道、中高層建築物といった構造物で隠れ、遠距離から捉えにくくなっている。また、車両通過や利便性を優先した、本州と四国または島と島を結ぶ橋の建設は、瀬戸内景観の固有価値を形成しているとはいいがたい。

2――. 瀬戸内沿海域に住まう人々の日常生活が海域から隔離されて個々の住宅の中で完結し、少子高齢化と相まって、屋外に表出する豊かな生活空間と行為が減少している。

3――. かつて、中景として捉えられていた構造物のスケールが大規模化したため、目的地に接近する際の景観の連続性が曖昧化し、景観の奥行が消失している。

本研究は、これまでの陸域側からの視点による評価に対して、瀬戸内海景観を海域からの眼差しで把握し、評価したことを特徴とする。そして、その契機となったシーボルトたち外国人による図像と文章の記録において賞賛を得られたかつての瀬戸内沿海域の有機的な生活環境は、海との密接な関係によって培われていたことを明らかとした。これは、各地域・各環境に即した整備・開発の重要性を示すものであり、その有効性を、現地調査と過去の記録の追体験による確認や、現地の人々との価値の共有を通して、地域社会の未来のあり方と今後の瀬戸内海のあり方―景観形成の哲学、海岸線の構築のあり方、建築物のデザインのあり方―を考究し、次の研究展開を仮説準備できたことは本研究の成果だと考える。

以上の研究成果をふまえ、これからも環境デザインの視点から、「場所」と「生活者」の固有性と、豊かな「営みと生活文化」の再評価に加えて、「瀬戸内海沿海域の水際線を取り込んだ景観の秩序形成ネットワークの必要性」を主張していきたい。

 


 

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「日本」図録第2巻:フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 中井晶夫他訳:雄松堂出版:1978
「日本」図録第2巻:フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 中井晶夫他訳:雄松堂出版:1978