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4.まとめ

当初、本播州織特区事業の計画では、「播州織工房館」、「産学連携ショップ(仮称)」、「播州織ギャラリー(仮称)」、「播州織サロン『手芸の里(仮称)』、「デザイナーズショップ」の5つの開設事業が3カ年で行われる計画であった。しかし、初年度の播州織工房館の開設事業に多くの費用を要したことにより、全体の規模を縮小し、「産学連携ショップ」と「播州織ギャラリー」を播州織工房館の中に併設した他は、「デザイナーズショップ」を開設したことに留まった。しかし、旧来住家住宅を中心にして、その東西に徒歩1分程度の距離に播州織工房館とデザイナーズショップができたことで、これらを巡りながら歴史性のある街並を体験できる、回遊性のある散策経路が生まれることになった。近隣の道の駅「北はりま田園空間」(西脇市寺内字天神池517-1)のサテライトに指定され、同道の駅から訪れる来館者が目立つようになった。オープン以来の来館者は、9000人を超えた(表1)。

商品開発においては「n+able」による最終製品の企画・生産を行い、播州織工房館がオープンした平成19年7月より1年7ヶ月の間でメインのシャツが約120着、「播州ジーンズ」は70着、「播州作務衣」は40着、「播州トートバッグ」は約280個、「播州やたらエコバッグ」も70個余りを売り上げた(表2)。「n+able」の売り上げ高は、約300万円になり、他のテナントを含めた播州織工房館全体では、700万円を超えた。しかし、常勤のスタッフを雇ったことや、営業日を増やしたことで経費が増加し、経営的には自立するに至っていない。

播州織工房館とデザイナーズショップが産学連携で開設されたことや、特色ある新規商品が開発されたことで、テレビ、新聞、地方新聞などのマスコミや地域の情報誌にも取り上げられた(表3)。平成21年3月24日の神戸新聞では、金融危機以降、円高や経済不況の影響を受け大幅に出荷数を落ち込ませている播州織にあって、播州織工房館とデザイナーズショップを「活性化への起爆剤に」したいと期待するという記事も見られた。2つの施設の開設や播州織の新商品の開発など、大学と産地との新しい試みは話題性を作り、播州織に注目を集めた。

平成20年度には、西脇高校生活情報科の卒業生で地元の播州織関連の企業で仕事をしている若いデザイナーを中心にした「アイプロ(西脇愛しているプロジェクト)」が結成され、播州織工房館にブースを設け、播州織を用いた商品の企画・販売を始めた。また、彼らと本学の西脇高校出身の西脇プロジェクトのメンバーとの交流も生まれ、播州織と西脇の活性化のための活動を始め、播州織工房館を拠点にして、「織物祭」でのファッションショーの実施、「そら祭り」への出店などを行った。また、同館内に「播州織ギャラリー」が併設されたことの一環として、播州織に用いられていたレピア織機が設置され、週末には織機を動かして来館者に織物が作られる様子を見学できるようになった。織機の運転は、織工場を退職した技術者がボランティアグループを作り、行っていただいている。2つの施設の改修時には、地元の工務店や各種の職人の方々が建築工事や家具の制作に協力してくださり、また、播州織を用いたオリジナル商品の開発を通して、建築とファッションの両方の領域において、大学と地域との新たな交流が生まれた。「播州織工房館」の開館前には地域づくりに関心がなく、むしろ騒音の発生等を心配していた近隣の人々も、工房館のスタッフとの日常的なふれあいを通して、徐々に協力的な姿勢を示しはじめてくれている。

次の課題は、このようにして出来上がった施設を、地域の人々の協力のもと、いかにうまく運営していくかである。現段階では、「播州織工房館」での商品販売による利益は必要な経費を賄うには至っていない。しかしながら、播州織を地域のブランドとして育てていこうとする人々の努力によって来訪者数は確実に増加しつつあり、2つの施設はそのような取り組みの拠点として、今後とも重要な役割を果たしていくだろう。

    

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