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図27

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図29

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図30

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図31

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図32

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図33

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図33

3.霧台式と七佳式の伝統服装の文様特色

以上、霧台村(男装3着、女装12着)と七佳村(男装4着、女装6着)に見られた伝統服装の材質、仕立及び文様構成について述べてきた。霧台村、七佳村の文様の特徴を纏めると、いくつかの仮説が見えてくる。まず霧台村で見た文様について以下に述べる。霧台式の伝統服装に見られた文様特徴は、四種類に分類することができる。

3−1 蛇のモチーフを用いて作られた文様

台湾の少数民族の中で蛇をモチーフとして始祖神として祭ったのは、ルカイとパイワン族のみである。ルカイでは蛇は人間の娘の結婚により民族の始祖が誕生したという神話があり、住居や衣服に描かれる百歩蛇模様は、頭目を中心とする集団的アイデンティティの核を成す重要な文化表象であるという。

石板や衣服、木彫り、石彫などに百足蛇が数多く描かれているのもこのためである。霧台村で見られた蛇の文様は具象的、抽象的、象徴的の三種類に帰納する(図27)。具象的な例として、二頭二身のRWB-2aあるいは一頭二身のRWB-3eが挙げられる。また抽象的な例として左右の方向が逆となり、渦巻いた表現が多くみられる。例えばRWB-3b、RWB-2a、RWA-1a、RWB-4a、RWB-2cなどの文様は内向きのものであるが、一方RWA-2a、RMA-1cの文様は外向きの構造となっている。

また、直立に立って右のほうへ渦巻いた表現の仕方もみられる。例えばRWA-4bの文様がそうである。さらに一対となった表現として、外向きと内向きのものが見られる。例えばRWB-3d、RWA-4aの文様が挙げられる。またRWA-2bのような文様は、蛇が交差した形態を象ったものであると言われ、パイワン族ではよく見られる。これは、kerlayと呼ばれる貴族を代表する記号である。これまで霧台村で見てきた蛇の文様とは大きく異なり、明らかに異種族のものであると推測することができる。

最後に蛇を象徴とするものの例として、三角連続紋のRMB-1d、四角連続紋のRMB-1eが挙げられるが、この二つの文様は百歩蛇の皮を象ったものだと言われており、いずれも蛇を象徴するものであると考えられる。

霧台村で見た抽象的渦巻紋の形態は、中国の明、清時代の漢民族の服装に見られる「如意紋」と呼ばれる文様の形態と酷似しており、パイワン族の貴族の間で使われている蛇の文様も見られる。これらの文様はルカイ族独自のものであるのか、それとも明、清時代、パイワン族の服式の影響を受けながら、自らの伝統に取り入れてきたものであるのか、今後の研究課題としたい。

3−2 人頭文様

霧台の伝統服装の文様には、RWA-3a、RWB-1a、RWA-4a(図28)などのパイワン風らしい人頭紋が見られる。RWA-3aのような羽冠人頭紋宇宙神(Ku-mas)と呼ばれ、屏東県春日郷七佳村や屏東県泰武郷佳平村のパイワン族の村ではガラスビーズ玉の刺繍文様としてよく知られている(図29)。

RWA-3a文様の表現はとてもユーモアである。顔が一つあり、その下には逆さになっている顔が一つ見える。RWB-1a、RWA-4aの文様はいずれも幾何学的な菱形で構成され、顔の形態が刺繍されている。このような文様もパイワン族の貴族を代表する記号であり、祖霊との信仰に深く関わっていると言われている。霧台村で人頭紋が見られるのは、パイワン族の影響によって作られたものであると考えられる。

3−3 生活用具、祖霊の信仰観念を取り入れた文様

RWB-5aは「連杯」と呼ばれる杯と壷二つの文様から構成されている(図30)。ルカイの文様としては極めて新しいものであり、近年加えられた文様であると考えられる。

「連杯」は、高めの杯としてパイワン族の伝統生活ではよく見られる。霧台村でこの文様が見られるのは、パイワン族から伝来した文様であると考えられる。「連杯」を使う際、一人が左手を用い、もう一人は右手を用いる。多くの場合は宴会や祭儀の際に使われるため、華麗な装飾文様が施されている。

一方、壷に関しては既に述べたように、ルカイやパイワン族の間では祖霊を生むものとして珍重された。ルカイ族では、先祖から受け継いだ壷が子孫を保護する力があると言われている。RWB-1c(図31)はルカイやパイワンの男性服装の縁を飾る文様としてよく用いられる。形態特性から見ると、右に四本の横棒があり、左に何かの形態が用いられている。この文様の形態はパイワン族の婦女が使う櫛の形(図32)と酷似しており、櫛の形態を象ったものではないかと考えられる。

3−4 パイワン族と混用する刺繍文様

霧台村で見られる十字繍、直線繍の文様は幾何学的な連続パターンが多い。その形態はRWA-1aの万字連続紋、RMA-1dの方形三角入れ連続紋、RMA-1bの直立方形連続紋、RMB-1bの十字八角星型紋、RWB-1bの連続植物紋などが挙げられる(図33)。RWA-1aは漢民族や平埔族の服装にもよく見られる。漢民族から発生し平埔族を経由し、ルカイ族やパイワン族に伝来したものだと考えられる。RMA-1dは赤、黄、緑の糸で縫い付けられており、一枚の布裂を織り込んでいる。これは、台湾原住民の伝統服装の中でもルカイやパイワン族の伝統服装によく表現されている文様である。地域差によってその文様の構造原理が異なる。

例えば、RMA-1dの真ん中にある一つ十字紋に対し、屏東県三地門郷で見られたほぼ同じ手法によって作られた文様(図33-1)は真ん中に一つの八葉植物紋が加えられている。また(図33-2)の文様はパイワンの伝統服装にみられる文様であるが、RMA-1dとも同じ構造をしているが、その真ん中のパターンは三地門の文様がやや変形したものだと考えられる。

一方、RMA-1bは十字繍の技法によって作られたものであり、ルカイ族のみならず、パイワン族においても類似する文様が見られる。

またRMB-1bのような文様の特徴はかなり明晰であり、南台湾原住民の独特なものであることが分かる。しかし、その中の八角星型紋の形態表現には地域差がある。例えばRMB-1bの八角星型紋の表現方法に対し、屏東三地門式の文様は(図33-3)ように表現されている。また(図33-4)のようなパイワンの伝統服装に見られる文様もある。

一方、RWB-1bの文様は屏東県瑪家郷のパイワン族の伝統服装(図27-5)にも見られる。

以上、見てきた刺繍文様はルカイの霧台村のみならず、パイワン族においても類似するものがある。地域差による文様の相違点、ルカイ族とパイワン族が相互にどのように影響し合っているのかを今後の研究課題とし、その地域の特徴を引き出していきたいと考えている。


 

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