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1−5 小結

白川郷はその合掌建築のユニークな形だけでなく、「ある時代、ある文化を代表する例」として挙げられている。その故、世界遺産白川郷の文化遺産保存においては、その「外形」だけではなく、そこに内包された「文化」を深く理解し、受け継ぐことが求められる。

本研究では、白川郷における景観色彩の文化的価値に着目した照度・色彩値の測定を通して、以下のような結果を得られた。

1) 合掌づくり住宅における光の利用と色彩文化の関連

合掌づくり住宅において、室内の日常生活に必要な光は、直射光を避け、透過光や反射光を巧みに利用し、柔らかい光を利用するための工夫をしている。特に、最も格式の高い客間や奥の客間は低照度分布となっており、床の間は常時陰の中にある。このような陰翳への拘りは、合掌づくり住宅の色彩使いにも大きな影響を及ぼしている。例えば、仏間の壁には渋い青の壁紙が張られており、客間や奥の客間は墨色の土壁となっている。深い闇に包まれた合掌づくり住宅で、このような渋い色調への嗜好が形成されてきたと推測される。

白川郷の住民たちは、太陽の光により住宅内部をまんべんなく明るくしようと欲張らず、生活の中に柔らかい反射光や透過光を取り入れることにより、光と陰の調和を図ってきたのである。これは、自然を征服するというより自然を無理なく利用する日本人の生活美学であり、このような美学により、日本人の自然に根付いた控えめな色彩観が生まれていることが窺える。

2) 合掌づくり住宅の外壁・室内空間に見られる「古び」の色の文化的価値

合掌づくり住宅は、木材、黄土、和紙、茅などの自然素材からなる。これらの素材は古くなるにつれて、暖かみのある茶色系統の色へと変化する。室外の色は、日照の良いところは薄い茶色へと変化し、湿気の多いところでは黒っぽい茶色へと変化している。また、室内の場合、毎日のいろりの煙にいぶされ、赤みのついた黒っぽい色へと変化しており、全体的に渋い色調となっている。このような渋い色調に合わせたかのように、和田家の仏間や客間の壁にも暗めの青や黒の壁紙や塗りが施されている。

色彩が氾濫する現代社会において、これら世界遺産白川郷におけるエコロジカルな色彩価値観は、日本人の色彩感性を伝える貴重な文化遺産であり、「持続可能な地域づくり」を再考させるための良い材料であるに違いない。

    

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