7.研究のまとめ

本研究で、瀬戸内沿海文化の実態とその歴史的変遷を、「環境デザイン」の視点から「沿海景観」「土地利用」について、シーボルト達がみた瀬戸内沿海域の景観が持つ固有価値の再評価のために現地調査・文献調査を行った結果、

1)自然地形(岬、森、山並み等)や神社といった、海からの風景の核となる要素が、シーボルトらが体験した時代と変わらず生きつづけている場所(阿伏兎観音、鞆等)があることが確認できた。

2)しかし、陸側からの視点のみで橋、車道、中高層建築物が建設された結果、海からの風景の核となる要素が遮断され、遠景からの目標物が捉えにくくなった。また、橋の建設が車両通過や利便性のみを優先したため、風景の構成要素となりうる橋が無い。

3)海と人の生活が隔離された結果、住民は個々の生活の中に閉じ、屋外に表出する生活や営みは減少し、少子高齢化と相まって、町にも人影が少なくなっている。

4)中景の構成要素のスケールが大規模化したため、遠景→中景→近景の風景の連続性が曖昧化し、風景の奥行の消失につながった。

以上の4項目を、瀬戸内沿海域の現状として結論づけた。更に、これら4項目に加えて、今回は詳細な調査を実施できなかった5)埋立てや近年の大規模工場撤退による未利用荒廃地の発生により、沿岸域の風景の質が低下している現状、も今後の課題とする必要がある。今後は、以上5項目に着目し、それぞれの海域や地域に即した海からの視点で瀬戸内沿海文化を再評価することにより、瀬戸内沿海域の活性化へと繋げる指針とする。


 

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