図9 測色計で計測した(L*,a*,b*)の結果

Larger

図9 測色計で計測した(L*,a*,b*)の結果

7.結果および考察

 本論文で試みた黒下塗り陽極酸化法で発色した試料と、従来の陽極酸化法のみで得られる発色試料を裸眼で観察するだけでも両者で大きく異なった色が得られていることが確認できた。しかし感性的な比較では定量性に欠けるため、本論文では測色計による色彩の計測を試みた。従来このような色彩計測の例は公表されていない。以下に測色計(MINORUTA Ci-1040i)を使用して計測した結果を示す。

7−1 色彩比較

結果を要約すると、従来の陽極酸化法では典型的な原色に近い発色が可能であるのに比べ、本手法による発色では灰色に近い中間色を基調とする落ち着いた色彩が得られた。具体的に今回の実験では、10Vから110Vまで11試料について従来の陽極酸化法と黒下塗り陽極酸化法を実施して図9.に示すような発色状況を測色計で測定し結果を比較した。従来法単独の場合(図中白抜き四角)と黒下塗り法を併用した複合法で実施した陽極酸化法(図中黒塗り四角)の両者の場合で、各図の下側に陽極に印加した電圧をそれぞれ示す。各図の縦軸、例えば右側には(L*a*,b*)表色系による色彩表示の内、a*座標(赤−緑)およびb*座標(黄−青)の色度をそれぞれ+/-60の間の数値で表したものである。また明度を示すL* は0/100の度数で左側の縦軸でその一部が示してある。L*値が50、すなわち中間の灰色の明るさを持つ場合に色立体を赤道面で切断した面でのa*およびb*の色相と彩度の関係を、図9の左一番上に示してある。このような表示法はどの色彩に関する教科書にも説明されているので、ここではこれ以上の説明を省略する。重要な結果をいくつか指摘しておきたい。

(1)従来法では原色に近い色彩が得られると云われていたが、実施した印加電圧の範囲内では赤味を示すa*が、60v、110vで、色度40に達するかなり鮮やかな赤味および80v、90vで薄い緑味の色彩が得られ、通説どおりの結果を定量的に示す結果となった。さらに50v、90v、100vで黄味が、および20v、70v の印加でかなり鮮やかな青味が得られた。従来法で10v印加の場合を除き色度30前後の黄色がわずかに得られている。

(2)これに対し、黒下塗り陽極酸化法では10v、20vの場合を除き、ほぼ全ての印加電圧で赤味が乏しい結果と、10vの印加時にのみ黄味を帯びる結果となった。

(3)明度に関しては従来法と本手法での大きな差は認められなかった。違いはあまり明確ではないが、それでも多くの場合に従来法より多少明度の低い色彩が得られたといえる。

以上のように今回の予備的な色彩計測の結果から、従来の陽極酸化法に比べて、黒下塗り陽極酸化法では赤−緑および黄−青色に関する鮮やかな原色と異なり、中間色に近い淡い色味の色彩が得られたと結論できる。少なくとも色に関しては、原色も中間色のどちらも色彩デザイン上必要なので、従来法と黒下塗り法を併用していくことが必要であろう。

また、目視による色彩判定だけでなく色彩測定器で測色し定量的な比較を行うのが重要である点も明らかになった。現在これらの結果のデ−タ−ベ−ス化を進めている。これまでもっぱら裸眼による作業者などの経験的な判断に評価が委ねられていたが、測色デ−タ−の蓄積と分析によって再現性のある色彩評価が可能になると期待される。なお、本論文の内容の一部は、芸術工学会講演会で金が既に発表した内容*11 を含むことをお断りしておく。


 

 HOME

 page top


金:芸術工学会誌45(名古屋,2007)PP.46-47