1 実践事例の概要

1−1 事例1 市バスすいすいキャンペーン「ペイントバス」

実施月日:
2007年10月7日13:00〜15:00
実施場所:
メリケンパーク(神戸市中央区)
参加対象:
小学生親子
企画・進行:
谷口文保
アシスタント:
小野裕子(造形表現学科助手)
伊藤貴史・小川あかり・原田翔太(以上、造形表現学科1年生)
岡本好加・奥田直美・金明希・國久真有・斉藤ひとみ(以上、造形表現学科2年生)
主 催 :
神戸市・神戸市交通局・神戸市交通労働組合
協 力 :
神戸芸術工科大学

内 容 :

平成19年度市バス走行環境改善キャンペーンおよび、神戸ビエンナーレ2007イベントとして開催。「市バス走行環境改善キャンペーン」は一般には「市バスすいすいキャンペーン」の名称で親しまれている。交通渋滞や環境汚染の対策を目的とする公共交通の利用促進、違法駐車の排除などを啓発するキャンペーン。「ペイントバス」は以前から実施されていたが、ここ数年は中断されていたため今回は久しぶりの実施となった。キャンペーンの時期と、神戸市で初めての大規模なアートイベントである神戸ビエンナーレが重なったことから、連携企画として実施することとなり、以前にも企画や制作を担当した神戸芸術工科大学に依頼があった。そこで造形美術が専門で、神戸ビエンナーレの実行委員を務めていた私が担当することとなった。

「神戸の海と山」をテーマに小学生親子がバスに直接、絵を描くイベント。神戸市内4校の小学生と保護者81組205名が参加。飛び入り参加や見学者も多数あり300名以上が賑わう催しとなった。彩色するバスは2台。一方を「海バス」もう一方を「花バス」とした。完成したペイントバスは10日余り街中を実際に営業運行された。「花バス」は西区・垂水区を走行する路線。「海バス」は中央区の路線で運行された。10月20日メリケンパークの神戸ビエンナーレ2007会場内で、キャンペーン出発式を行い、21日から一般路線を運行。(図1、2、3、4、5)11月4日には「交通フェスティバルin名谷車両基地〜B−FREE〜」にて展示された。


図1 キャンペーン出発式

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図1 キャンペーン出発式


図2 「海バス」の後部

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図2 「海バス」の後部 


図3 「花バス」の側面

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図3 「花バス」の側面


図4 「海バス」の側面

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図4 「海バス」の側面

図5 神戸ビエンナーレ会場

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図5 神戸ビエンナーレ会場


制作過程:

企画で工夫したのは、最終的な完成を想定して制作を段階的に実施した点である。子どもたちのスケッチを事前に集め、全体を象徴するような図像をあらかじめ大きく配置した下絵を作成する。当日はその下絵に彩色しつつ、参加者がその場で「魚」や「花」を描き加えて完成させるように計画を立てた。段階的な作業とすることで、計画的に構図やバランスをまとめることと、当日の思いつきや発展を許容しライブ感のある制作を実現することとの両立を図った。

事前に小学校4校に協力を依頼して「海の生き物」と「花」のペン画や鉛筆画を作成していただいた。「海の生き物」は神戸市立山の手小学校、神戸市立こうべ小学校。「花」は神戸市立小束山小学校、神戸市立東小学校。依頼した小学校は全て、ペイントバスが運行される路線周辺の学校である。小学1年生から6年生まで合計350点余りの作品が集まった。このスケッチから十数点を選び、バスの画面に配置し、下絵図面を作成した。

当日はバス到着と同時に、主催者スタッフによってマスキング作業が行われた。(図6)マスキングが完了した時点で、図面をもとにアシスタントが下絵を作図。(図7)13時から開会式。(図8)簡単な説明を経て制作を開始した。参加者は下絵の彩色と、余白に各自「魚」や「花」を作画した。(図9、10)当初予定していた以上に参加者が多かったため、絵具の準備や彩色作業の交代などで混乱する場面も見られたが、親子が協力して楽しく取り組んでいた姿が印象的であった。大まかな彩色ができた時点で、記念写真を撮影してイベントを終了し、解散とした。その後、私とアシスタントで塗り残しをまとめ、輪郭線を描いて仕上げていった。(図11)最後にマスキングを取り除いて完成となった。(図12)

図8 開会式

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図8 開会式

図6 マスキング作業

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図6 マスキング作業

図7 下絵の作図

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図7 下絵の作図


図11 輪郭線を描いて仕上げる

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図11 輪郭線を描いて仕上げる

図9 「海バス」の制作

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図9 「海バス」の制作

図10 「花バス」の制作

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図10 「花バス」の制作

図12 マスキングを取り除いて完成

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図12 マスキングを取り除いて完成


1−2 事例2 神戸市営地下鉄「クリスマス電車」

制作期間:
制作11月14日〜12月5日
設置作業12月5日(名谷車両基地にて)
展示期間:
2007年12月6日〜12月25日
運行路線:
西神・山手線1編成(女性専用車両を除く) 
協力組織:
7幼稚園1大学
神戸幼稚園、名谷こすもす幼稚園、名谷きぼうの丘幼稚園、名谷あおぞら幼稚園、たもん幼稚園、いかわ幼稚園、櫨谷幼稚園、神戸芸術工科大学
主 催 :
神戸市・神戸市交通局・神戸市交通労働組合

神戸芸術工科大学の制作について

原案と制作:谷口文保

イラストレーションと制作:奥田直美(造形表現学科2年生)

内容:

「より市民の皆様に密着した地下鉄に」をテーマにクリスマスイベントの一環として実施。神戸市営地下鉄のクリスマスデコレーションは以前から実施されていたが、しばらく中断していた。今回は数年ぶりに実施することとなり、主催者からの依頼で近隣幼稚園と神戸芸術工科大学が制作協力することとなった。私は前述の「ペイントバス」を実施した経緯から、交通局関係者の紹介で直接連絡があり、担当することとなった。制作したシートは電車内のガラス窓に貼り付けられ、電車の前後の先頭部にはクリスマスヘッドマークが取り付けられた。(図13、14、15)なお神戸市営地下鉄では同様のデコレーション企画として「七夕〜ひこぼし号、おりひめ号」などを実施している。

接着剤不要でガラスに密着する透明静電シートを用いて絵を描く。できたシートを各車の窓に内側から貼り付ける。以前は関係職員の手で、市販のウィンドウディスプレイ用の型紙を利用して制作されていた。沿線の幼稚園や大学に依頼しての実施は今回が初めてであった。各幼稚園は静電シートに絵具で直接描いて制作。神戸芸術工科大学はオリジナルデザインの型紙を制作し、白色ラッカースプレーでスノースプレー風に仕上げることになった。私が原案を作成し、造形表現学科2年生の奥田直美さんがイラストレーションを担当した。奥田さんは以前からユーモラスなイラストレーションを切り絵の技法で制作していたため、共同制作を提案して一緒に取り組むこととなった。

図13 クリスマス電車の外観1

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図13 クリスマス電車の外観1

図14 クリスマス電車の外観2

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図14 クリスマス電車の外観2


図15 クリスマスヘッドマーク

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図15 クリスマスヘッドマーク


図16 「(1)雪ダルマ登場」の場面

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図16 「(1)雪ダルマ登場」の場面 

図17 貼り付け作業

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図17 貼り付け作業

制作過程:

原案のテーマは「雪ダルマを主人公にした温かなお話」。4コマまんが風に4つの場面を作成。「(1)雪ダルマ登場」(図16)「(2)もう一人の雪ダルマ発見」「(3)二人の雪ダルマの出会い」「(4)友達になって温かになる」。この原案を奥田さんがイラストレーション化。できたイラストレーションを拡大コピーしてケント紙に転写し「図と地」のバランスを考えながら切り抜き、型紙を制作した。出来た型紙を静電シートに密着させ、白色ラッカースプレーを吹いて完成。12月5日、名谷車両基地において神戸市交通労働組合高速乗務支部青年女性委員会の有志ボランティアの皆さんと一緒に車両への貼り付け作業を行った。(図17)

1−3 事例3 神戸文化ホール「壁画制作」

作品タイトル:
芸術家の卵たち 〜震災のまちから芸術文化のまちへ〜
制作期間:
制作準備12月〜1月
現地制作1月9日、10日
展示期間:
2008年1月11日〜3月末
展示場所:
神戸文化ホール玄関ロビー
制 作 :
谷口文保
小野裕子(造形表現学科助手)
岩本舞・岡本好加・奥田直美・川本汐莉・金明希・斉藤ひとみ・畠岡孝太・真鍋雄三・山本このみ(以上、造形表現学科2年生)
主 催 :
財団法人神戸市民文化振興財団・神戸文化ホール
協 力 :
神戸芸術工科大学

内容:

大ホールのアスベスト除去工事(2007年11月10日〜2008年3月末)のため設置された工事壁(高さ4m横幅13m)に壁画を制作する事業。施設入口の正面に設置された工事壁がとても大きかったことから、工事期間中のイメージを和らげるとともに、来場者に一層親しんでもらうことを目的に壁画制作を企画。私は主催者から相談を受け、全体テーマと画面構成を提案。主催者とのミーティングの中で、阪神淡路大震災のあった1月17日「震災の日」を、芸術で元気にしていくことも重要な目的となった。制作には造形表現学科造形美術専攻の2年生9名と小野裕子助手が参加することとなり、画面構成の詳細を調整しながら進めることとなった。壁画は、大小11個の卵を作図し、制作参加者11名が各自1個をアクリル絵具で彩色し、仕上げられた。(図18、19)

図18 神戸文化ホール

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図18 神戸文化ホール

図19 小野助手と参加学生

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図19 小野助手と参加学生


制作過程:

共同制作で壁画を描く場合、一般的には下絵を作成し、それを手分けして彩色していく。しかし今回は、テーマ設定を工夫して、個人制作の集合がそのまま壁画になるように計画を立てた。テーマとなった「卵」は生命や誕生を想起させる。鳥の飛翔につながるイメージは、希望や未来のメタファーである。まず大学生各自が、これまでに制作した絵画作品から1点選んで原画とする。原画をもとに、卵形の画面に描く。それが複数集まると、多様な個性がつまった卵(=これから羽ばたいていくアーティストたち)の集合表現となる。壁画全体の構成は原画をもとに、隣り合う卵の色や大きさのバランスを考えながら制作者全員で検討した。

壁画制作は周囲を汚さないように、ビニールシートや新聞紙でしっかりとカバー。絵具はアクリルジェッソを使用した。原画をもとに、それぞれ自分の卵を描いていく。最も注意したのは制作進行と安全確保であった。これほど大きな壁画制作は私も含めて全員が初めてであったため、制作に必要な時間が十分予測できなかった。私は常に個々の進行状況の把握につとめ、色彩や描きこみのバランスも全体の仕上がりを見ながら微調整していった。また、高所作業もあるため安全確保に十分気を配った。一日目は卵の大きさと位置のバランスを取りながら下絵を作図した。(図20)二日目は全メンバーで早朝から制作。予定通り夕方完成することができた。(図21、22)完成した壁画は工事の進行と共に一度移設され、3月末の工事終了とともに撤去された。(図23、24、25)

図20 下絵の作図作業

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図20 下絵の作図作業

図21 壁画制作1

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図21 壁画制作1


図22 壁画制作2

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図22 壁画制作2



図23 全体写真(右)

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図23 全体写真(右)


図24 全体写真(左)

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図24 全体写真(左)


図25 全体写真(中央)

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図25 全体写真(中央)


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