図1-1-1 K邸外観(写真:鎌田、2008)

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図1-1-1 K邸外観(写真:鎌田、2008)


図1-1-2 K邸外観(写真:鎌田、2008)

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図1-1-2 K邸外観(写真:鎌田、2008)


図1-1-3 K邸。内部と斜面緑地をつなぐテラス(写真:鎌田、2008)

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図1-1-3 K邸。内部と斜面緑地をつなぐテラス(写真:鎌田、2008)


図1-1-4 K邸。リビングと一体化したテラス(写真:鎌田、2008)

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図1-1-4 K邸。リビングと一体化したテラス(写真:鎌田、2008)


図1-1-5 Y邸。南庭から望む(写真:鎌田、2008)

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図1-1-5 Y邸。南庭から望む(写真:鎌田、2008)


図1-1-6 Y邸。リビングから南庭を望む。(写真:鎌田、2008)

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図1-1-6 Y邸。リビングから南庭を望む。(写真:鎌田、2008)


図1-1-7 Y邸。北側全面道路から望む。奥に斜面緑地とクヌギの大木が見える(写真:鎌田、2008)

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図1-1-7 Y邸。北側全面道路から望む。奥に斜面緑地とクヌギの大木が見える(写真:鎌田、2008)


図1-1-8 Y邸。リビングからみた斜面緑地とクヌギの大木(写真:鎌田、2008)

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図1-1-8 Y邸。リビングからみた斜面緑地とクヌギの大木(写真:鎌田、2008)


図1-1-9 「舞多聞建築ネットワーク」による住まいづくり(写真:宮代、2008)

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図1-1-9 「舞多聞建築ネットワーク」による住まいづくり(写真:宮代、2008)

1 みついけプロジェクトの実践

1−1 みついけの住まいづくりの実践

「ガーデンシティ舞多聞」のスペースデザインを継続的にサポートしている神戸芸術工科大学 齊木崇人研究室では、2005年から、みついけプロジェクトの住まいづくりをサポートしている。現在までに8世帯の依頼を受け、7世帯が入居済、1世帯が2008年度内入居予定である。

2007年度は、「樹林の中にたたずむ美しい風景のある住まい」(K邸)と、「広々とした庭に菜園をもつゆとりのある住まい」(Y邸)の2軒が竣工した。

1−1−1 樹林の中にたたずむ美しい風景のある住まい(K邸)

みついけの敷地はすべて平坦ではなくその形状も異なる。この敷地は南に面したわずかな平地と西側に大きく傾斜した斜面を持ち合わせており、この傾斜地には、豊かな雑木林と大きな2本のクヌギがいきいきと育っていた。まず私たちはその敷地が持つ秩序を理解する作業を何度も繰り返し、高低差、独特な敷地形状、大きく育ったクヌギといった土地の特性を生かしながら、建物がいかにその土地に溶け込むかを考えた。

計画にあたりこの斜面を有効に利用し、周囲の豊かな自然に溶け込む住宅となるよう、建物の計画に際して大きな造成は行っていない。斜面に沿った配置を実現するために建物をスキップフロア型にして、敷地との一体感を持たせている。建物の存在感を抑えるように心がけて、普段の生活は夫婦2人であることから、家のボリュームをできるだけコンパクトにまとめることにした。

地形差を利用してスキップフロアとなったこの建物は、4つのレベル差のある空間を持っている。1階の最も低いレベルに設けたリビングダイニングは、間仕切りのない広々とした空間を確保し、クヌギに面して西向きに大きな開口部を設け、全面的に開放している。これによってクヌギが西日を遮りながら、夏はクヌギがつくる冷風が室内に流れ込み、冬は葉をおとしたクヌギ越しに陽が差し込むことで、機械的設備に頼らない住まいとなった。このクヌギは印象を深く心に刻み、生活に話題を提供し、涼しい木陰をつくり、豊かな季節感を楽しませてくれる大きな役割を担っている。

さらに、リビングダイニングとのつながりをもったテラスデッキを西側に大きくとったことで、空間の広がりと一体感が生まれ、家族や多くの来客が一度に集まったときにも活躍し、外部の豊かな自然と一体となって多目的に使える場となった。 中間レベルに配置された玄関や居室からは、リビングダイニングとは異なった木々や光の表情が望め、一番高いレベルの寝室からは遠くに瀬戸内海や明石大橋が望まれる。

建物に設けた窓は、単なる採光・通風のための装置ではなく、豊かな緑へと開けた窓として、外部とのつながりや風景との対話を強く意識できるように工夫している。 構造は木組の伝統的民家スタイルを継承しながら、進化させ、未来につなげるというコンセプトのもと、国産木材を使用した木造軸組工法を採用している。杉無垢板の外壁には鯨油、内壁には柿渋を使うなど、伝統的な自然素材を積極的に使用することで、健康的でかつ、その家に人が暮らし使い込まれることによって更なる美しさを放つようになる。

この住まいは、恵まれた環境を損なうことなく建てるための工夫、つまり自然に逆らわず建てることが、大きな自然の恵みを得ることに繋がった。(図1-1-1、1-1-2、1-1-3、1-1-4)

1−1−2 広々とした庭に菜園をもつゆとりのある住まい(Y邸)

この敷地は南北に長く平地にゆとりがあったため、まず建物を平屋にすることで接地性を持たせることを考えた。また、敷地の南面の斜面にはクヌギが大きな存在感をもって育成しており、この大木を活かした住まいづくりが最大のテーマであった。

建物の形状は伝統的民家スタイルで、切り妻の大屋根で葺かれたシンプルな構成としている。木組の構造がもつ美しさに着目して、余分なデザインを削ぎ落とすことで生まれる美しさを追求した。構造は国産木材を使用した木造軸組工法を採用し、内部はどの部屋も木組の構造が表れた空間で構成され、建物の中心に大黒柱が大きな存在感をもって配置されている。

屋根勾配を敷地南面の斜面と同じ8寸勾配とし、地形の傾斜がそのまま屋根勾配に生かされ風景が重なるように心がけて、大屋根の重厚感と平屋の接地性を強く意識したデザインとしている。

リビング・ダイニングは、南庭の菜園と南斜面のクヌギの大木に面して全面的に開放し、ウッドデッキを設けることによって広がりと一体感を持たせている。8寸勾配の屋根によって広々とした吹き抜け空間が生まれ、南向きに大きく採った開口部は周囲の豊かな自然と景色を積極的に採り入れている。室内が南面する場合の課題である、夏の直射日光は軒を深く取ることで遮り、かつ冬の陽を採り入れる寸法となるよう「けらば」の出寸法を棟木部と桁部で寸法を変えて工夫している。

普段の生活は夫婦2人の生活であることから、その他の居室は寝室のみで構成しているが、屋根勾配を活かした屋根裏部屋を設けて、空間を余すことなく利用することによって、コンパクトでありながら広く使える空間構成とした。

全ての部屋にそれぞれの意味をはっきり意識できる窓を設けることで、街のそよぎはそのまま住まいの中に取り込まれ、自然の風が家族を包むような空間となるよう、南北通風のとれる開放感溢れるプランづくりを心がけた。また、空間を水平にとらえるのではなく、屋根裏部屋をリビング・ダイニングを吹き抜けで空間的につなぐことによって、垂直方向にも上昇して風が家中を通り抜けるように工夫している。

この建物は、風土の中で熟成してきた住まいの良さを継承し、伝統的民家スタイルを未来へつなぐための住まいとして、木の温もりや風景を取り込んだ開口部の広がりなど、伝統的な空間の質と周辺環境に敬意を払った住まいづくりを目指した。さらにそれらの要素を現代の生活に再構築し、敷地形状、気候風土と住まい手の価値観が加わることで、その場所に適した居住空間を生み出せたのではないかと考える。

一日の中で光の変化、一年を通じての季節の変化、年月を重ねるごとに家や庭が熟成していく、そんな上質な豊かさを追求した。(図1-1-5、1-1-6、1-1-7、1-1-8)

1−1−3 建築ネットワークによる住まいづくり〜建築家によるネットワークを構築〜

研究室は、2005年8月、兵庫県と大阪府の建築士会を通じて、プロジェクトに賛同する建築家を募り、「舞多聞建築ネットワーク」を構築した。現在までに25名の登録建築家と、14社の登録施工業者が参加している。

ネットワークは、コーディネートの専門家(幸田真生子氏)のサポートを受けながら、研究室が窓口となって活動している。その中で、法律事項、契約事項、トラブルの対処法を、施主に示すシステムを構築した。

また、隣接する住まいづくりを担当しているそれぞれの建築家同士が、プランや模型を持ち込み、隣棟間隔や窓の位置、隣地境界付近の仕上げ等についての調整も行っている。

みついけプロジェクトでは、現在までに8世帯が建築ネットワークを利用しており、6世帯が入居済み、2世帯が2008年度内に入居予定である。(図1-1-9)


 

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