4 まとめ

 本研究では、王家大院の実測調査と山西省の他の大院との比較調査を通じて、王家大院の空間構成、配置構成、建築彫刻などの特徴を考察した。その結果、丘陵地に立地して南北方向に敷地を展開し、窰洞を包含した構成が今回比較した大院の類例中において特殊なものであることや、木・石・磚による建築彫刻は、その量・規模・モチーフの多様性において最も高い水準にあることなどが確認できた。
 2005年度と2006年度の2ヵ年にわたり、主として神戸芸術工科大学のメンバーにより王家大院の建築的特徴とその位置づけについて調査してきたが、調査対象が広大であるがゆえに、実際に得られた成果は、王家大院が持つ歴史的・文化的価値の総体からみれば、ごくわずかで、ごく基礎的な内容だといえるだろう。しかしながら、本研究で得られた知見や実測図等のデータは、これから王家大院を題材に研究を進める際には重要な手がかりになるはずである。したがって、本研究をきっかけに、今後さらに王家大院の研究が進展することを期待したい。

注・参考文献

*1―
2005年の調査の概要については、大田尚作ほか「三大学合同調査―王家大院を事例として―」神戸芸術工科大学紀要芸術工学2006、2007年3月、(URL:http://kiyou.kobe-du.ac.jp/06/report/13-01.html)を参照。
*2―
本来は斜面上に各大院*3が並ぶため、図4の断面図に明らかなように各大院の1階はすぐ前の大院の2階に相当する高さにあるが、ここに示す1階平面図には実際の高さにかかわらず、便宜的に各大院内における1階を同一平面に描いた。
*3―
中国では「大院」は大きな住宅を意味し、「王家大院」のように住居群全体の総称として用いられるほか、ひとつの住居としてのまとまりをもつ単位(王家大院の場合、二進院や三進院の四合院)をさす語としても用いられる。本稿ではこの慣例にならい、「大院」の語を両義的に用いる。
*4―
窰洞考察団『生きている地下住居』彰国社、1988年、pp.70-75
*5―
地上窰の造り方については、上記*4を参照されたい。


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