2 結果と考察

21 被験者の属性と実施環境

 冬プログラムでは女性17名、男性16名となり、概ねバランスのよい男女比の参加が得られ、平均年齢は21才(標準偏差1.39)といずれも20代前半であった。被験者全体の約半数は都市域の居住者、残りの半数が農山村の居住体験があり、その大部分は森林体験がほとんどないごく一般的な都市域の青年層であった。
 冬季は12月に森林探索プログラムを、2月に林床管理プログラムを行った。いずれも湿度40%前後の条件下で実施され、特に2月の林床管理は外気温が低い状態での実施となったが、風の影響が少ない林内での林床管理により、体が温まることで外気温の差ほどは寒いとは感じなかった。


22 森林浴プログラムによるリラクゼーション効果の測定

 冬の教室における林内活動前の心理状態(赤丸)と、管理放棄された林内における1)森林探索プログラムと、2)林床管理プログラム終了後の心理状態(緑丸)をそれぞれ被験者全員分のPOMST得点の平均値で図化した。(図-3)

 参加者は、森林探索で20名、林床管理で13名となり、全体的に学内の教室における両プログラム実施前は、全体にストレス要因が高いのに対し、体験後は良好な心理状態を示す「氷山型」となった。
  冬は夏(前報の結果)に比べて、林内活動の内容による林内活動後の心理状態の差が少なく、いずれも、教室における活動前の心理状態と比べてストレス要因が統計的に有意に低いだけでなく、活気が有意に高くなる結果となっている。


図3 林内活動プログラム前後の心理変化 (従属2標本のt検定:※p<0.05)

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図3 林内活動プログラム前後の心理変化 (従属2標本のt検定:※p<0.05)


23 森林浴効果と季節ごとの好ましい場所(林内)の分布状況との関連性

 森林探索時に各被験者が好ましいと感じた場所のプロットを見ると、緑の丸で示す夏の結果が、ネザサや中低木の密度が低い尾根部に比較的集中するのに対して、「日の光(木漏れ日) がさす」との夏と同様の理由でも、冬に好ましいと感じられる場所(×印)は樹冠が落葉することで林内に広く分散する傾向にあった。(図-4)
 このことから、管理放棄により低木が密生する二次林でも、高木の落葉で樹冠が開放される冬には、好ましいと感じられる場所が増え、森林探索および林床管理のいずれの林内活動後にも心理的な癒やしの空間となりやすいと考えられる。


図4 季節ごとの好ましい場所(林分)の分布状況

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図4 季節ごとの好ましい場所(林分)の分布状況


24 林内活動プログラムによる環境教育効果

環境学習効果に関する事後アンケート調査の結果を夏季・冬季を合わせて図-5に示す。


図5 林内活動プログラムによる環境学習効果

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図5 林内活動プログラムによる環境学習効果


 事前レクチャーは森林探索前には高木層の優占種による空間的な分類法や植物の特定法を、林床管理前には明るく開放的であった日本の里山の管理放棄による植生遷移の概要と、常緑樹の密生化による生物多様性の低下について紹介した。それらのレクチャー効果については、16名(59%)がリラクゼーション効果を高めると回答し、どちらかといえば効果がないとの回答が5名(19%)に止まる結果となった。このことからも植生区分や植生遷移の概略を理解した上で、探索や林床管理を行う方が目的意識が与えられ達成感が高まると考えられる。
 実際に、人の手が加わって形成されてきた二次林(里山)環境に関する予備知識や、目的意識を持たずに管理放棄林に入ってリラックス効果が得られるとは考えにくいことから、このような事前のレクチャーが与える効果の重要性は高いように思われる。
 また、本プログラムの参加によって緑地環境への意識が変わるかという設問には、夏・冬の回答を合計すると22名(85%)が以前よりも意識すると回答し、さらに今回と同様の森林探索や、里山管理への参加意欲については、25名(96%)が「是非、参加したい」、「参加してもよい」と回答し、参加したくないとの回答は0名となった。
 林内活動の参加前後の“好きな森林のイメージ"については、約半数の14名(54%)が以前と異なる森林を好むようになったと回答し、変化した理由として「プログラムを通じて視覚的なイメージから五感でのイメージへ変化した」や「これまで木の種類など意識せずに森を見ていたが、落葉樹と常緑樹の関係性や自然のしくみを意識するようになった」という感想が挙げられた。
 そのイメージについても当初は散策路の背景として描かれていた森林が、実際に林内にいるような表現へと変化しているもの(赤枠)が多くみられ、全体的に樹木等の表現がより具体的になる傾向(緑枠)がみられた。(図-6)


図6 森林イメージの変化

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図6 森林イメージの変化


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