図1 民泊

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図1 民泊


図2 食堂

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図2 食堂


図3 土産物店

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図3 土産物店


図4 敷地別用途分布図

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図4 敷地別用途分布図

3:建築と集落

3−1 調査の概要と目的

 河回村はここ数十年で観光地としての知名度を大きく上げ、観光化が著しく進行している。このため、昔ながらの生活を営む村人の割合は減少し、かわって観光にかかわる仕事に従事する人々が増加してきている。このような観光化に伴う変容実態を的確に把握することは、現状に即した村の景観や個々の建築物の保存計画を検討していくにあたって、とりわけ重要と考えられる。そこで、ここでは河回村内の全ての敷地・建築物の用途を調べ、数十年前には全く存在しなかった民泊(民宿) (図1:民泊)、観光施設、食堂・土産物店などの観光客向けの店舗 (図2:食堂) (図3:土産物店) がどの程度存在するのかを明らかにすることにより、観光化の進行状況とその特徴を把握することにした。


3−2 調査スケジュール及び調査方法


8月8日:午前中、メンバー全員で作業要領を確認しながら建築用途を調査。午後、3班に分かれて作業の続きを実施。
8月9日:前日の補足調査
8月10日:午前中、調査結果の取りまとめと発表の準備。午後、成果の合同発表会。
 具体的な作業としては、事前に衛星写真(Google Map)を利用して作成しておいたベースマップを利用し、民泊を赤色、土産物や食堂などの観光客を対象とした店を紫色、一般公開している博物館などの施設を青色、住宅等の住民の日常生活に関連したものを黒色に塗り分けた。なお、この色分けに際しては、調査時に敷地の境界線も確認し、敷地全体を上記の建築用途に塗ることにより、敷地ごとの用途分布を示す図を作成した。(図4:敷地別用途分布図)


3−3 河回村における観光化の進行状況とその特徴


3-3-1:民泊の割合と分布
 今回の調査によれば、河回村の敷地総数は127であった。民泊はその中に34ヵ所あり、全体の26.8%を占める。また、民泊は集落のほぼ全域に分布している。そして、集落周縁部の民泊は、比較的近年に新築または増築したものが多いが、それに対して集落中央部分の民泊の大部分は、新築・増築を行わずに元々の建物を転用、あるいは空き部屋を利用しているという傾向がみられた。

3-3-2:食堂、土産物店、その他観光関連施設の分布
 本調査においては、観光施設が11ヵ所、食堂や土産物店などの観光客向け店舗が全部で21ヵ所認められた。前者は全体の8.7%、後者は16.5%に相当する。また、これらの施設および店舗は、主として観光客がめぐる主要動線沿いに配置されていることも確認できた。

3-3-2:観光化の進行状況
 上記の結果から、民泊・食堂・土産物店を合計すると、実に66ヵ所(全体の52.0%)の敷地が観光に関わりを持っていることが判明した。残る61ヵ所(全体の48.0%)は住宅等である。これらは民泊と同様に集落のほぼ全域に分布していたため、全体的に住宅等と民泊とが混在している状態であるといえる。


3−4 小結


 以上の調査分析から現在の河回村は、全体的に観光地としての性格を強めており、そのことが村落内の敷地・建築物の用途変化に顕著に反映されていることがわかった。観光に関わりをもつ敷地・建築物が過半数を占めることから、村の人々の生活が次第に観光業に依存しつつあることが窺えるが、一方でこうした観光収入が、河回村の景観や建築物の保存事業のための資金源となっていることも事実である。ただし、観光施設や食堂・土産物店などが主に沿道に集中して増加していることが示すように、もし観光化が過度に進行すれば、村落の伝統的景観や空間構造が損なわれていくであろうことは想像にかたくない。
 また今回の調査からは、民泊と住宅等が集落全域に混在していることが判明した。しかしながら現地に滞在していても、住民の生活を目にする機会はほとんどなく、観光客相手の様々な商売の陰に、一般住民の生活はひっそりと隠れている印象を受けた。
 今後、観光業と良いバランスを保ちつつ村落の景観・建築物の保存を推し進めていくためには、観光施設や宿泊所・商店といったハード面での施設整備を行うのみではなく、同時に村落のソフト面、すなわち伝統的ライフスタイルそのものの再評価を行い、その良さを観光客らと共有して育てて行くような、思慮深い環境形成が求められるだろう。



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