1. 研究の計画

1−1 研究の目的と背景

 本研究は、瀬戸内海諸地域の江戸時代から現代までの変遷過程において、産業・経済・文化を支えていた社会的・空間的要素とそのネットワークを沿海文化史の視点から読み解き、瀬戸内海諸地域における参画と協働に基づく地域活性化の提言への準備資料の作成を目的としている。
 具体的には、各研究メンバーの過去の研究・調査蓄積の再整理および既往研究調査資料の体系的収集、それらのデータベース化と比較分析を通して、(1)研究対象地の陸路および水路からの現地調査による実態把握、(2)沿海文化史からみた瀬戸内海東部地域の秩序崩壊要因と新しい社会・空間秩序形成要因の背景を考究する。
 また、究極の目的として、本研究の目的(1)〜(2)の内容を更に発展させ、瀬戸内海東部地域、加えて、瀬戸内海全域の参画と協働に基づく自立した地域再生プログラム、土地の再生利用、コミュニティとそのネットワークのあり方の提言をねらいとしている。具体的には、地域住民による「沿海文化の学習と理解」、「潜在的諸資源の発見と活用」、「内発的沿海地域再生への取り組み」 などの構築と実践が考えられる。
 瀬戸内海地域固有の風土の基に保たれてきた町並みや集落を、沿海諸島文化・空間秩序・歴史的背景それぞれの視点を持つ研究者達が集まり、その変遷過程を共同で研究、再評価、再構築することを目指しているという点において、本研究は、近代化の波を受けて大きく変化しつつある瀬戸内海諸地域の沿海文化と居住環境の将来のあり方を探求する上で、緊急かつ重要な課題である。

 なお、本稿は、特に(1)研究対象地の陸路および水路からの現地調査による実態把握と、(2)沿海文化史からみた瀬戸内海東部地域の秩序崩壊要因と新しい社会・空間秩序形成要因、を考究するための研究調査の作業仮説を明らかにすることに重点をおいてまとめられている。


1−2.実施計画


1−2−1.研究対象地の陸路および水路からの実態把握
 平成18年2月、3月、8月の3度に渡り現地調査を実施した。そこでは、広島・宇品港、宮島、室津、上関、牛島、祝島、八島、平郡島、屋代島、二神島、津和地島、下蒲刈島、斎島、大崎下島、岡村島、大島、能島、岩城島、尾道、阿伏兎岬、鞆の浦、走島、白石島、北木島、真鍋島、佐柳島、高見島、広島、本島、櫃石島、直島、男木島、女木島、豊島、小豊島、小豆島、坊勢島、家島、神戸港を巡り、固有価値を持つ各島(牛島の波止、下蒲刈島の雁木、本島・笠島集落のまちなみ、八島・真鍋島・岩坪集落の空間構成、平郡島・小豊島の環境単位等)と、直面している社会的問題(鞆の浦沖に計画中の橋の建設問題、山林の衰退、本州及び四国沿岸の工場地帯の盛衰等)、固有価値を持つ風景(禿山から回復した小佐木島、塩飽諸島・斎灘のシークエンス等)等を把握した。


1−2−2.沿海文化史からみた瀬戸内海東部地域の秩序崩壊要因と新しい社会・空間秩序形成要因を明らかにする
 1)明治維新を契機とした社会的・文化的衰退、2)江戸期に構成していた風景(「塩田」「松林」等)の再評価、3)瀬戸内沿海諸地域を結ぶシータクシーNPO設立に向けてのプロポーザル、を提示した。
 また、瀬戸内海諸地域における参画と協働に基づく地域活性化の提言への準備資料の作成については、平成17度科学研究費補助金(基盤研究(C))の研究成果報告書としてまとめた。



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