まとめ

 以上のように、今回のデザイン提案では「みんなでつくる、みんなの場所」を共通のコンセプトとして、新長田駅南地区の地下通路に組み込む仕掛けを、それぞれ「わたしのきもち」、「みんなのたな」、「たなからやたい」、「まちのきおく」と名付けた4つのプロジェクトとして提案した。これらのプロジェクトは、いずれも単なるハードとしての内装やストリートファニチャーのデザインにとどまるものではない。「わたしのきもち」と「まちのきおく」においては、地下通路の壁面をはじめとした様々な場所に人々のメッセージや地域内の様々な場所のイメージを表現する際の制作過程そのものに地域の人々を参加させることにより、そのプロセスを通して、これまでは無縁であった地下空間を地域の人々が自分たちの場所として意識しやすくなる仕掛けが組み込まれている。また、「みんなのたな」および「たなからやたい」においては、地域の人々が個々に地下空間を利用できる仕掛けを設けることにより、地下通路内の様々な場所を人々の生活領域の中に組み入れ、人々が自然にそこへ足を運ぶようにしむける仕掛けが組み込まれている。
 まちのなかの様々な空間は、人々が継続的にそこを利用し、そこと関わり、そこで様々な出来事が発生することにより、それらの蓄積を通して徐々に人々の記憶の中で一定の意味をもつ空間になる。その時、それらの空間は、人々の記憶と結びついた場所になるのだといえる。そして、地域の人々によって共有される場所が多く存在するほど、それらの場所のつながりによって形成されるまち自体も、意味が豊かで魅力的な空間になるに違いない。ここで提案したデザイン・プロジェクト、「みんなでつくる、みんなの場所」は、再開発によって生まれた新しくて意味の希薄な空間を、そのような魅力的な空間に作りかえてゆくための、ひとつの処方箋なのである。

注・引用文献

*1― 権利変換方式によって行われ、民間も施行者となることが可能な第一種市街地再開発事業に対し、第二種市街地再開発事業は用地買収方式によって行われ、施行者となれるのは県・市・公団のみに限られる。
*2― ここで紹介した新長田南地区地下道のデザイン提案「みんなでつくる、みんなの場所」は、新長田まちづくり株式会社からの依頼により2005年9月〜12月に行った受託研究の成果をまとめたものである。
*3― このデザイン・プロジェクトをまとめる上での現地調査および企画制作にあたっては、大学院生である豊崎寛樹、橋本大樹、山形晃大3名の協力を得た。記して謝意を表す。

 


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