1 現状分析とデザインの課題

 アスタくにづかの開発コンセプトの内、空間的に最も大胆な提案のひとつとして実現したのが、「アスタくにづか」1番館、3番館、5番館の地下1階から地上2階までの3層吹き抜けプロムナードである。そのねらいは、大規模な立体モールとしての複合的な商業ゾーンを創りだすことによって、商圏の拡大と集客力の増大をはかることにあった。しかしながら、実際にはこの立体モールはこの地区を南北に移動する人々の主動線とはなっていない。実際には人の流れは地上部分、それも1番館、3番館、5番館の内部ではなく西側の大正筋に集中しており、立体プロムナードはかえって建物内部における人の流れを分散させて、賑わいのある場所が成立しにくい結果を招いている。


写真1 アスタくにづか5番館地下(二葉小路)の現状 

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写真1 アスタくにづか5番館地下(二葉小路)の現状

図1 アスタくにづか立体モールの構成概念図

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図1 アスタくにづか立体モールの構成概念図


 また、地下部分に限らず、アスタくにづか商業ゾーンの売上高低迷のもうひとつの要因が、同じ地区内の新しい住民の消費行動を充分に取り込めていないことにあると考えられる。平成16年10月に行なわれた神戸ながたTMOによる商圏実態調査によれば、アスタくにづかを含む新長田駅前商業地に対する評価は、他の周辺居住者と比較したとき、アスタ分譲マンション居住者自身による評価が最も低い。また、日曜日の買物先については、周辺居住者においては新長田駅前商業地が第一位であるのに対して、アスタ分譲マンション居住者においては三宮元町が第一位となっている。アスタくにづか1番館の地下にある食品を主としたスーパーなどはアスタ分譲マンション居住者の日常的な買物先として最も良く利用されてはいるが、それら以外への消費行動の広がりが見られない。
 一方、アスタ新長田の周辺にも目を向けるなら、この地域には昔ながらの個性的な雰囲気を持つ商店街も、多く存在していることに気がつく。特に、六間道、本町筋、丸五市場といった商店街には、昭和の下町の懐かしい風景が今なお残っている。震災で大きな被害を受けた大正筋は新しく生まれ変わったが、新長田の商業地全体としてとらえた場合、再開発されたビル群だけでなく、古い街並みが同じ地域内に併存することは、商業空間の多様性を演出し、魅力的な生活の場を創り出す上での、貴重な資源であると考えられる。しかしながら、これら旧来の商店街にも以前ほどの活気はなく、新長田の商業地は全体として衰退の危機に直面しているといえるであろう。


写真2 ちょっとレトロな、個性的な店構えの店舗(六間道)

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写真2 ちょっとレトロな、個性的な店構えの店舗(六間道)

写真3 六間道商店街のアーケード

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写真3 六間道商店街のアーケード


 今回求められている、大橋地下道および各建物間と地下鉄駒ケ林駅をつなぐ地下通路のデザインにおいては、このような状況を少しでも改善することにつながる提案が求められている。もちろん、地下通路のデザインを変えただけで、地下および周辺の商店街への客足が直ちに増加することはあり得ないが、現在、どちらかといえば無性格な地下通路のデザインを、個性的、印象的なものとし、さらに、地下の通路空間を人々が通るきっかけや、地下の通路空間のいくつかの場所に、人々がかかわり合いを持つような仕掛けを施すことによって、地下の様々な空間の存在を、より多く人々の意識に上らせることは可能であると考えられる。また、そのデザインの過程やデザインされた空間の利用において、地下の商店街を何らかの方法で他の商店街や周辺住民を含めた地域全体に関係づけることができれば、相互コミュニケーションの触発による相乗的な活性化作用が生まれることも期待できる。
  地下通路の様々な場所に、地域の人々が関わりを持つようなやり方で個性を与え、さらに、そこで実際に何らかの行為と結びつくような仕掛けをどのように設ければ良いか。これが、今回のデザイン提案の課題である。


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