1 現地調査

 第1回調査は、休日における利用実態を把握する目的で2004年7月4日(日)に行った。午前7時〜午後7時まで現地に滞在し、来訪者へのアンケート調査を行なうとともに、人々による浜辺空間の利用の様子を写真撮影し、さらに人や物の分布状況を時間帯別に地図上に記録した。


1−1  第1回調査


1−1−1 アンケート調査
 a)来訪者の居住地、b)来訪に用いた交通手段、c)浜への来訪頻度、d)年齢の他、浜へ来た目的や浜についてどう思うか等についてヒアリングによるアンケートを実施した。以下はa)〜d)の4項目についてのアンケート結果で、7 時〜11 時(時間帯A )、11 時〜15時(時間帯B )、15時〜19 時(時間帯C )の3つの時間帯に分けて集計した結果のグラフである。


図2 居住地アンケート調査集計

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図2 居住地アンケート調査集計

図3 交通手段アンケート調査集計

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図3 交通手段アンケート調査集計



図4 来訪頻度アンケート調査集計

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図4 来訪頻度アンケート調査集計

図5 年齢アンケート調査集計

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図5 年齢アンケート調査集計


 まず、来訪者の居住地について見ると(図2)、浜に隣接する2つの小学校区内からの来訪者が41%、それ以外の西宮市内からが27%、西宮市外からが32%で、この浜の利用者は近隣の人々が主ではあるものの、遠方からの来訪者も少なくないことがわかる。これを時間帯別に見ると、時間帯Aでは近隣の小学校区からの来訪者が半数以上を占めるが、時間帯Bでは逆に西宮市外からの来訪者が6割となり、時間帯Cでは、再び近隣の小学校区からの来訪者が半数以上となって、市外からの来訪者は2割以下に減っていることがわかる。また、来訪に用いた交通手段についての結果もこれに良く対応しており(図3)、時間帯Aと時間帯Cでは徒歩が半数以上であるのに対し、時間帯Bでは車による来訪者が半数以上となっている。
 さらに、来訪頻度についての調査結果も(図4)、このような結果と関連したものとなっている。すなわち、時間帯Aでは「ほぼ毎日」来るという回答が半数以上で、時間帯Cにおいても「ほぼ毎日」と「週1日以上」という回答を合わせると半数以上になっているのに対し、時間帯Bでは逆に、「めったに来ない」という回答が8割以上となっている。また、来訪者の年齢についての調査結果を見ると(図5)、高齢者の割合は時間帯Aでは大きく、時間帯Bでは逆に小さくなっており、時間帯Cは両者の中間であることがわかる。
 これらのアンケート回答者に対しては、浜へ来た目的や浜についてどう思うかに関してもヒアリングをおこなった。その結果、来訪目的としては散歩(犬の散歩を含む)が最も多く、様々なスポーツや水遊びのためという人々も多かった。また、特に昼の時間帯にはバーベキューのためという回答が目立った。浜については、「気持ちが良い」「いいところ」という印象を述べる人が多かった反面、「水が汚い」「ゴミを捨てる人が多い」といった問題点を指摘する人も少なくなかった。
 現地調査においては、アンケートとヒアリング以外に具体的な利用の様子を写真にも記録しつつ観察したが、時間帯Bにおいては、調査日が日曜日ということもあり、県外から車でやって来て、大人数または家族でバーベキューを楽しむ例が多数観察された。また、少数ではあるが、海に入ってウィンドサーフィンなどを楽しむ人々も見られた。一方、時間帯Cで特に目立ったのは「犬の散歩」であった。犬を連れて歩く人々の間には、犬を媒体としたコミュニケーションがとられ、毎日同じ時刻に特定の人が集まっていることもわかった。

1−1−2 浜における人々の分布図
 [時間帯A] 朝の散歩、ウォーキングをしている人、海を眺めながらゆっくりしている人々などが中心で、利用場所は浜全体に分散している。


図6 浜の利用状況プロット図(7時から8時)

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図6 浜の利用状況プロット図(7時から8時)


 [時間帯B] グループごとにテントやブルーシートによる日除けがいくつも作られ、そこを拠点として人々が集まっている。テントや等は浜の中央付近にある樹林に隣接して設置される場合が多く、海岸に近い位置に設置される例も見られた。


図7 浜の利用状況プロット図(12時から13時)

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図7 浜の利用状況プロット図(12時から13時)


 [時間帯C] ほぼテントが撤去され、犬の散歩を目的として浜に来る人が多くなる。浜の中央付近で集まるいくつかのグループと、数人ごとに海岸に近い位置で佇む人々、浜全体を自由に散歩する人々などが混在している。

 

 


図8 浜の利用状況プロット図(18時から18時30)

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図8 浜の利用状況プロット図(18時から18時30)

 


1−2  第2回調査


 第2回調査は2004年8月27日(金)に行い、第1回調査と同様に3つの時間帯に分けてアンケート調査を実施した。時間帯Aと時間帯Cでは、第1回調査とよく似た傾向の調査結果が得られた。時間帯Bにおいては、来訪者の数自体が少なかったため、特に明確な結果を得るには至らなかった。この調査においては、現地で小さなイスの貸し出し実験を行ない、ちょっとした道具が与えられることにより、浜辺の利用風景に変化が生じるかどうかや、イスがどの程度の範囲まで広がって活用されるかなどを観察した。浜の中央付近に100脚のプラスチック製の小さなイスを積み上げて、自由に持っていって使ってもらった。

写真2 貸し椅子利用風景1

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写真2 貸し椅子利用風景1

写真3 貸し椅子利用風景2

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写真3 貸し椅子利用風景2



図9 貸し椅子利用状況分布図(14時から14時30分)

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図9 貸し椅子利用状況分布図(14時から14時30分)

 図9はこのようにして貸し出されたイスの、午後2時〜2時半における分布を示している。浜の中央のやや堤防側よりに多くのイスが集中しているのは、ひと組の団体が輪をなして集まっている様子を反映している。また、海岸に沿って、多数のイスが分布している様子も示されている。イスという道具が与えられたことにより、多人数の人々の集合形態が変化したり、海岸に沿って座るという行為が誘発されたり、一定の場所にとどまる時間が少し長くなったりする様子が確認された。また、ピンクのイスが自然海浜の中に散在する様子自体が、浜の新しい風景を生み出す結果となった。


1−3 調査結果のまとめ


 第1回調査の結果からは、御前浜という阪神間の都市部に位置する自然海浜が、異なった種類の人々によって、時間帯別にうまく使いわけられている様子が明らかになった。外来者によるゴミの放置や近隣の路上への迷惑駐車等の問題はあるが、浜の利用風景そのものには大した混乱はなく、近隣住民と広域の来訪者とが同じ空間を巧みに共有し、地域に属しつつもより広い社会へと開かれた現代的な公共空間のひとつのあり方が、ここには示されていた。一方、第2回調査における実験からは、そのような公共空間における人々の行為と意識とが、ちょっとした仕掛けによって、微妙に変化しうる可能性を検証することができた。



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