3 加古川地区・靴下の地場産業との産学連携の取り組み

 兵庫県播磨地域では古くから地場産業として靴下製造が行われている。明治初期に中国から手廻しの靴下編立機が持ち帰られ、当時は農作業の副業として靴下製造が行われていた。明治中頃に煙草が官営事業になると靴下製造は徐々に播磨の地場産業として浸透していった。大正初期には半自動式靴下編立機、さらに大正13年には自動靴下編立機が輸入され技術革新が進んだ。しかし昭和に入ると金融恐慌や戦争、中国や東南アジアへの産地移行などの影響で靴下業界全体が大きなダメージを受けた。兵庫県靴下工業組合は昭和28年に設立され、靴下三大産地(奈良・東京・兵庫)の一つとして業界をリードしてきた。現在の組合員数は104社、国内生産高は18%を確保しているが、組合の抱える問題は深刻だ。先にも述べたが工賃の安い中国や東南アジアに生産拠点を奪われ、国内生産は生き残りをかけて品質や付加価値を高めた商品開発に力を注いでいる。中でも商品のオリジナリティーやブランド力は必要不可欠であるが、若者の労働力不足に悩む播磨地域では新たな企画や提案をする能力が薄れている。そこで我々はデザインを学ぶ学生の発想力と地場産業の技術力をつなぎ合わせた新たな商品作りの提案を試みた。参加した学生は神戸芸術工科大学even art project*6の有志メンバー7名、参加企業は4社。まずは打ち合わせを兼ねたデザイン提案会を行うと同時に、作り手側から見た技術指導やアドバイスをいただき、デザイン修正を加えた上、各工場でサンプル制作を行っていただいた。

3−1 サンプル1<敏感肌の方にも履きやすい靴下の提案>

 アトピー性皮膚炎や敏感肌の人は靴下履き口のゴムの締め付け感に不満を感じている。そこで敏感肌の人も安心して履ける靴下の提案を行った。履き口のゴムはずり落ちない程度まで緩くし、つま先縫合部分の糸をあえて色糸で縫製し、縫い代を表(外側)に出してデザインポイントとなるよう設計した。

図32 敏感肌に配慮した靴下

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図32 敏感肌に配慮した靴下


3−2 サンプル2<子供の描いた絵をオリジナル靴下にする提案>

 子供の描いた絵を靴下の柄に取り込み、子供らしいのびのびとした自由な世界を靴下で表現した。編み組織上に一目一目絵を描くと大人の絵でも子供が描いたような絵になってしまうため、絵の選別や大きさ・色・レイアウトなどに気を配った。

図33 子供の絵をモチーフにした靴下

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図33 子供の絵をモチーフにした靴下


3−3 サンプル3<even art projectオリジナルキャラクターグッズの提案>

 Even art projectのオリジナルキャラクターのイラストを使い子供用と大人用の靴下を企画した。親指と4本の指が分かれている足袋ソックスをベースにし、かかとには指を引っ掛ける為のリボンを縫いつけた。これは子供はもちろんのこと半身麻痺やリウマチなど手に力が入りにくい人が自分で靴下の着脱がしやすいようにと考えたユニバーサルデザインの提案でもある。

図34 even art projectオリジナルグッズの靴下

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図34 even art projectオリジナルグッズの靴下


3−4 サンプル4<ファッションアイテムとしての靴下の提案>

 ユニバーサルデザインファッションショーで使用するレッグウェア(靴下)の制作協力をお願いした。金銀のラメ糸を用い、長さの異なる靴下を数種類制作した。重ねて履くこともでき単体で履くこともでき、ピタッとしたりダボダボだったり、履き方によってスタイリングやコーディネイトで変化を楽しめるアイテムとなった。

図35 ファッションショーでの発表の様子

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図35 ファッションショーでの発表の様子

 これらのサンプル靴下については2005年8月17〜19日、神戸国際展示場で開催された「第三回ユニバーサルデザイン全国大会・ようこそUD広場へ」にて展示発表及びファッションショーを行った。


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