図1-2-1 2003年4月に配布された提案パンフレット(作成:齊木研究室 2003.3)

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図1-2-1 2003年4月に配布された提案パンフレット(作成:齊木研究室 2003.3)


図1-2-2 ガーデンシティ舞多聞ホームページ(http://www.maitamon.jp)

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図1-2-2 ガーデンシティ舞多聞ホームページ(http://www.maitamon.jp)


図1-2-3 第13回公開講座の風景(写真:齊木研究室、2005.7)

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図1-2-3 第13回公開講座の風景(写真:齊木研究室、2005.7)


図1-2-4 ワークショップ「種から苗木を育てよう」における参加者の様子(写真:齊木研究室、2005.11)

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図1-2-4 ワークショップ「種から苗木を育てよう」における参加者の様子(写真:齊木研究室、2005.11)


図1-2-5 みついけプロジェクトグループ募集と個別募集の分類

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図1-2-5 みついけプロジェクトグループ募集と個別募集の分類


図1-2-6 グループ募集のステップ

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図1-2-6 グループ募集のステップ


図1-2-7 希望グループごとに集まって話し合う(写真:齊木研究室 2004.8)

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図1-2-7 希望グループごとに集まって話し合う(写真:齊木研究室 2004.8)

1−2 住まう人々が居住環境の価値観を共有する「コミュニティデザイン」

 魅力ある空間は住まう人々によって命を与えられる。研究室では、新しい地域コミュニティに住まう人々は、居住環境に関する価値観を共有し、従来のニュータウンで語られてきた孤立し、建物の中に閉じた不安な生活からの脱却を図らなくてはならない、と提案した。

(1)アンケート調査から「舞多聞倶楽部」結成まで
 2003年4月、みついけプロジェクトで掲げているガーデンシティと地域コミュニティづくりのコンセプトのニーズを確認するために、研究室が主体となり、舞多聞の計画地に隣接した地域の約4万5千世帯に提案パンフレットとアンケートを悉皆配布した(図1-2-1)。約480世帯からの回答があり、一定層のニーズが把握できた。同年8月の回答者を対象とした旧ゴルフ場の敷地見学会には45組84名の参加者を得て、居住希望者の実態把握をすることができた。その後、回答者約480世帯を主な構成員とした「新・田園都市倶楽部(現・舞多聞倶楽部)」を結成し、「ガーデンシティ舞多聞ホームページ」(http://www.maitamon.jp/)を開設した。現在の会員数は、2度の新聞折込広告の配布を経て、約1,600世帯を数えている(図1-2-2)。

(2)公開講座・ワークショップの開催
 舞多聞倶楽部会員の居住環境改善に対する意識の向上や、参加者同士のコミュニケーションの促進を目的とした、公開講座やワークショップが継続的に開催されている(図1-2-3、4)。
 テーマは「住まい」「コミュニティ」「エコロジー」の3項目を基本とし、各テーマを実際の地域コミュニティづくりとリンクさせながら学習することによって、参加者がステップアップできるようなプログラムとなっている。
 公開講座やワークショップには、初めて参加する人々に対し、それまで継続的に参加してきた人々が教える、というスタイルが確立し、メンバー全体の知識の向上に貢献している。
 また、公開講座やワークショップで行われた内容は常に記録され、ホームページで紹介され、あわせて倶楽部会員に配布される「舞多聞倶楽部ニュース」にて公開されている。

(3)グループ募集とグループワークショップ
 みついけプロジェクトの全68区画は、「向こう三軒両隣」を基準に分けられた、7つのコミュニティから構成されている(図1-2-5)。各コミュニティの約3分の2(40区画)は事前にグループを形成し、その単位で応募をする「グループ募集システム」が採用された。これは抽選で行われている従来の応募方式では、転居後に初めて「お隣さん」を知ることになり、そこから始まる地域コミュニティ形成は、どちらかと言うと個に撤退し、閉じた関係を生み出しやすい、と仮説し、みついけプロジェクトでは公開講座やワークショップにより共有意識を持った持続可能なコミュテニィを育成したいという観点から、グループ募集方式が採用された。しかしながら、残りの28区画は、都市機構の性格上、一般の人々への募集も必要とされ、従来通りの個別の抽選募集も加えて行われた。
 グループワークショップは40区画8グループのコミュニティ形成促進のために行われた。参加者は希望するグループ分かれ、「どんな家、どんなまち、どんな環境に住みたいか?」という3項目について意見を交換し合った。ここでの成果を「グループ協定書」としてまとめ、グループの代表者を定めた上で応募時に提出することが、各グループに求められていた(図1-2-6)。
 数回のワークショップと現地見学会を経てグループが形成され、2004年12月に入居者の抽選が行われた。はじめにグループ募集の抽選が行われ、8グループに対し15グループの応募があった。次いで個別募集には28区画に対し412世帯から応募があり、それぞれ居住者が決定した(図1-2-7)。
 当初は68区画全てでグループ募集が行われる予定だったが、都市機構には案件を国民に平等に周知させる義務があり、「舞多聞倶楽部」という限られたグループの中で販売を完結することは、その義務に反することから、28区画は従来の個別募集で行われることになった。
 新聞の折込広告も利用され大量の応募者を招く結果となってしまった。個別に応募した人が当選し、熱心に公開講座やワークショップに参加し居住を強く希望していた人が落選するという事態も生じた。この結果は「グループ募集」の当選メンバーが「個別募集」のメンバーを受け入れることにより、新たなコミュニティ形成の工夫が行われ、この経験は必ず将来入れ替わっていく住民を迎えるためのトレーニングになったことも事実である。しかし、落選に泣いた人々のことを忘れることはできない。


図1-2-8 コミュニティワークショップの様子(写真:齊木研究室 2005.11)

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図1-2-8 コミュニティワークショップの様子(写真:齊木研究室 2005.11)


図1-2-9 各コミュニティの話し合いの様子(写真:齊木研究室 2005.11)

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図1-2-9 各コミュニティの話し合いの様子(写真:齊木研究室 2005.11)


図1-2-10 コミュニティワークショップの集合写真(写真:齊木研究室 2006.3)

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図1-2-10 コミュニティワークショップの集合写真(写真:齊木研究室 2006.3)


図1-2-11 建築協定(齊木研究室作成)

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図1-2-11 建築協定(齊木研究室作成)


図1-2-12 緑地協定(齊木研究室作成)

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図1-2-12 緑地協定(齊木研究室作成)

(4)入居者決定後の「コミュニティワークショップ」
 入居予定者はまちびらきまでの約1年間(2005年2月〜2006年3月)、都市再生機構と神戸芸術工科大学の主催により2ヶ月に1回開催される「みついけコミュニティワークショップ」の参加が義務付けられた。持続可能な地域コミュニティを実現するために、住宅・まちなみ・自然環境(保全緑地、公園)に関して学習しながら、「建築協定」や「緑地協定」「ガイドライン」を構築することと、入居までの参加者のコミュニケーションを図ることを主な目的とした(図1-2-8〜10)。
 2005年11月、第5回目のワークショップにおいて、「建築協定」「緑地協定」「ガイドライン」が入居予定者の意思によって決定した。

1)建築協定の検討
 住宅の位置は、道路から壁面を後退すること(セットバック部:2mもしくは1m)、セットバック部には堅固な構造物(門・塀・フェンス等の工作物)を設置してはいけないこと(ただし、周辺の敷地に供給するために設置される変圧器等電気・通信機器類および一部例外は除く)、隣地境界から建築物の外壁仕上面を1m以上後退させることが決まった。
  意匠においては、屋上に設置するものやネオンサインに類するもの、幟・垂れ幕に類するもの、高さが2mを越えるもの(ただし建築物として一体として設置するものは除く)、表示面積が合計で2m2を越えるもの(一部例外エリアあり)、周辺環境との調和を乱すものといった看板・広告物は設置できないことが決まった。
 建築設備においては、立体駐車場は設置できないこと、屋根付きカーポートを設置する場合は、周辺環境との調和を図ること、屋外に設置される設備機器は道路などから見えにくくすること、屋外に自動販売機は設置できないことが決定した(図1-2-11)。

2)緑地協定の検討
 緑化に関しては、樹木・芝生等を積極的に植えること、隣地との境界は可能な限りオープンにするが、防犯面・安全面等から仕切りを設置する場合は、生垣または透視可能なフェンスとし、設置の詳細(生垣またはフェンスの高さ等)・維持管理については、隣地と調整することが決まった。
 修景に関しては、セットバック部は、歩行者が歩ける空間とし、芝生とブロック舗装(一部芝生のみまたは芝生と統一した低木植栽とします)とすること、また車両等の保管場所としての利用はできないこと、駐車場、車路、玄関への通路等は、緑化、自然素材の利用等にて、積極的に修景することが決まった。さらに、敷地とセットバック部との境界は可能な限りオープンにするが、防犯面・安全面等から仕切りを設置する場合は、生垣または透視可能なフェンスとすることも決まった。
 維持管理に関しても、敷地内の既存樹木や周辺の公園や緑地など、運営委員会を中心とした住民全員により、良好に維持管理することが決定した(図1-2-12)。

3)まちづくりの「ガイドライン」の検討
 「ガイドライン」とは、全員合意に至らなかったため、建築協定・緑地協定の項目とはならなかったもののうち、入居予定者の2/3以上の同意を得た項目についてまとめたもので、位置に関しては、隣地境界から壁面(建築物の外壁仕上面)を2m以上後退させること、緑化に関しては、敷地とセットバック部との境界から敷地側1m以内に、シンボルツリーを1本以上植えること、修景に関しては、敷地とセットバック部との境界に設置する仕切りの高さは1.5m以下とすること、隣地との境界に設置する仕切りの高さは1.5m以下とすること、オープンスペース率を20%以上とすること(オープンスペース率=道路境界線から建物前面間のスペース/敷地面積(ただし平地部のみ))が決まった。
 これらの項目のうちで1世帯の合意が得られなかったために、協定に取り入れなかった内容もある。ここに、入居予定者の「ガーデンシティ舞多聞全体としての環境価値への目覚めと、個人の土地の利益と利用の権利」という自己矛盾が見え隠れする。これは入居予定者全員が共有している課題といえる。その場面では、同意をしなかった世帯に対し、他の世帯が責めることはなかった。

 いくつかの項目がガイドラインに「格下げ」になったことで、居住環境の質が下がると指摘する声もあるが、最終的には日本独特の「恥の文化」と「コミュニティの力」に委ねられると考えている。
 それは、みついけプロジェクトのルールが、タウンプランナーや行政担当者から一方的につくられたものではなく、コミュニティワークショップを通じて入居予定者自らが、共有の目標を模索しながら、議論を重ねた上で構築したものだからである。入居予定者たちは、ルールとは「つくるもの」「使いこなすもの」であり、時と場合に応じて「修正できるもの」と共有されつつある。


図1-2-13 住宅デザインヒアリングの風景(写真:齊木研究室、2005.12)

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図1-2-13 住宅デザインヒアリングの風景(写真:齊木研究室、2005.12)


図1-2-14 住宅デザインヒアリングにより完成した平面図(齊木研究室作成)

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図1-2-14 住宅デザインヒアリングにより完成した平面図(齊木研究室作成)


図1-2-15 住宅デザインヒアリングの成果に基づいたルール案(齊木研究室作成)

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図1-2-15 住宅デザインヒアリングの成果に基づいたルール案(齊木研究室作成)


図1-2-16 住宅デザインヒアリングの成果に基づいた1/200の模型(齊木研究室作成)

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図1-2-16 住宅デザインヒアリングの成果に基づいた1/200の模型(齊木研究室作成)

(5)住宅デザインのヒアリングとワークショップ
 コミュニティワークショップと平行して、2005年3月から9月まで研究室が中心となり、みついけの全入居予定世帯を対象とした、住宅構想デザインのための個別ヒアリングが行われた(図1-2-13)。
 ヒアリングを行う、解決すべき課題となる背景は二つある。まず、現代の日本の住宅のイメージは、プレハブメーカーの住宅展示場でみる住まいづくりが主流となっている。居住希望者の多くは、雑誌等で提案される住宅デザインの、70坪前後の正方形に近い平坦な敷地に建てられるような計画をモデルとしており、みついけプロジェクトの家族の住まいづくりのプラン・外観共に、平均215坪の広い敷地に自らの住まいを自ら創ろうとする要求に応えられる可能性が低い。第二に、みついけコミュニティワークショップの中で建築協定や緑地協定のルールづくりを行う際に、個々の家族の住宅プランが無いままに検討を進めて行くと、ルールそのものが「机上の空論」になる可能性がある。以上のような課題を解決することを目的として行われた(図1-2-14〜16)。
 なお、ヒアリングを通じて提案される住宅構想プランは、各入居者が建築家や工務店に実施設計を依頼する際に「参考プラン」として扱われるものであり、必ず従わなくてはならないものではない。また、ヒアリングは必須ではなく、希望世帯のみを対象とした。
 個別ヒアリングでは個々の家族の素直な要求をまとめ、住みたいプランの引き出しを行った。家族とのやりとりの中で隣家やコミュニティ、周辺環境を考えながら基本プランを確定していく作業を行った。各世帯につき2〜3回のヒアリングを研究室で行い、2006年9月に60世帯の住宅参考プランが完成した。
 この作業を行う中で、入居予定者と研究室のメンバーとの間でプランニングを介した、隣接した住宅との空間的調整が行われ、まちづくりと住まいづくりに関する意識を高め合う仕組みを実験的に構築することができた。その後、建築設計者が決まり、基本設計と実施設計を経て住宅建設が着工し、竣工に至るまでの間には、設計者やビルダーの意識も高めていかなくてはならないことが指摘された。


図1-2-17 公園づくりの現地ワークショップの風景(写真:齊木研究室、2004.4)

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図1-2-17 公園づくりの現地ワークショップの風景(写真:齊木研究室、2004.4)


図1-2-18 公園づくりの現地ワークショップの風景(写真:齊木研究室、2004.4)

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図1-2-18 公園づくりの現地ワークショップの風景(写真:齊木研究室、2004.4)


図1-2-19 街区公園のデザイン計画案(作成:齊木研究室、2004.6)

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図1-2-19 街区公園のデザイン計画案(作成:齊木研究室、2004.6)


図1-2-20 溜め池と周辺緑地(写真:齊木研究室、2006.5)

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図1-2-20 溜め池と周辺緑地(写真:齊木研究室、2006.5)

(6)公園づくりのワークショップ
 2006年7月、これまで研究室が行ってきた現地ワークショップ、植生調査、デザイン計画策定を基に、みついけの中心部に位置する街区公園のデザイン計画や管理計画を、住民の意見を採り入れながら行う、「公園づくりワークショップ」がスタートする。この公園敷地は、ゴルフ場時代からの斜面や緑地を残し、小高い丘を持つ地形になっている。
 2004年3月と4月に、舞多聞倶楽部会員を対象とした、公園づくりの現地ワークショップが、造成前のみついけプロジェクトの現場にて開催された。入居者決定以前ではあったが、第1回目は49組89名、第2回目は73組142名が参加し、溜め池の周辺緑地の笹刈り、街区公園計画地周辺の下刈り、桜の木の移植、などを行った(図1-2-17、18)。
 同年4月から7月に、研究室では斜面緑地(宅地、街区公園、緑地公園)の植生調査を行い、みついけプロジェクト全体の植栽計画を検討した。また、同年6月には植生調査の結果に基づき、街区公園のデザイン計画の提案を行った(図1-2-19)。
 2006年7月から始まる公園づくりのワークショップで、みついけの住民たちは、緑地や斜面を生かしながら、時を経ても魅力と固有価値を増す公園づくりを目指す。
 街区公園は、デザイン計画が確定した後、同年11月に公園の整備が開始され、翌年春に行われる「ガーデンシティ舞多聞」のまちびらきに合わせて整備が完了する予定である。
 また、みついけの南東部にある、兵庫県の環境アセスメントにより保全が決まった溜め池と周辺緑地は、緑地公園として整備されることが決まっている(図1-2-20)。この公園のデザイン計画も、前記の街区公園と同様、ワークショップを通じて住民の意見を採り入れながら行われることが予定されている。
 街区公園、緑地公園は、後述のエコロジカルな住まいづくりを目指す住民組織「エコネットワーク(みついけエコ倶楽部)」や、緑地管理や緑化を考える「グリーンネットワーク」の活動拠点として活用されることが期待されている。



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