図14 トン族集落に見る空間構成

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図14 トン族集落に見る空間構成

4|おわりに

 トン族の住まいには「自然と共存する、生き続ける活力」があった。祖先たちの知恵や経験を継承し、その土地や文化に見合った「現在の生活を活かす方法」を確立していた。決して裕福ではない彼らの生活は実に豊かで、環境・人・空間がバランスよく調和されており、人々の表情は明るい。
 トン族の住む空間は自然と共に共存し、互いにその大切さを尊重しながら生き続けている。人々の暮らしと周辺環境(「ところ」)には、私たちが忘れつつある伝統コミュニティの「かたち」と「営み」がしっかりと組み込まれていた。鼓楼・広場・水系・風雨橋がつくりだす集落空間と伝統的住居、それらを取り囲む棚田・山林の自然環境が、人々の生活と密接に関わり空間を構成している。その全ての要素は1つとして切り離せないものであり、数百年の時を経て受け継がれてきた。棚田・広場に見る土地選定と空間利用の技術、水系・風雨橋に見るコミュニティの運営と技術、鼓楼・住居に見る造形技術と文化が中国貴州省、広西省に住むトン族の伝統的環境観として集落を形成している。(図14)
 初めて出会う私たちを、集落の住民はあたたかく迎え入れてくれる。かつて漢民族の迫害を逃れて山間の地に移り住んだ彼ら少数民族は、困難な状況のもと助け合いながら生きてきた。技術や文化、精神性など、目に見える物質的な豊かさでは計り知れない大きな共通財産を持っている。そのような固有の伝統文化を尊重し、継承し続ける彼らの暮らしから学ぶ要素は多い。

注・引用文献
・住宅建築 1990年4月号   
 「中国貴州の高床住居と集落」
・住宅建築 1993年4月号   
 「蘇洞・トン族の村と生活・貴州トン族住居調査委員会」



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