3.これからのデザイン指針

この一連の研究から、まだ部分的ではあるがユーザーインタフェースの評価に用いる評価軸の抽出と、映像コンテンツのためのデザイン活動に役立つ視点をいくつか得ることが出来た。また、これまでのデザインワークでは当たり前と考えてきた『インタフェースデザインの決まり手』が、必ずしも多くの支持を得ないこともわかった。ただ、今回の分析のみで結論を出すのは早計過ぎる。音声での操作にしても、未だ人間にとって相応しい音声を用いての作法を見出せていないだけなのかも知れないが、しぐさにせよエージェントにせよ、その作法はヒューマンなレベルには達していないと解釈できそうだ。今後に取り組むデザイン表現において、よりヒューマンな要素を高めていくためにも、本研究を継続していきたい。

しめくくりに、ここまでの評価検証から得たデザイン視点として、以下の3点をあげておきたい。

1: システムやデバイスの魅力と、ユーザーインタフェースの利便性との両面を兼ね備えた価値観の表現。
2: 新たなメタファやアフォーダンスを発見することと、それを応用した新たな操作作法の創出。さらに、その操作作法に近未来感覚あふれる表現を加え、映像コンテンツの中のユーザーインタフェースとしての価値を高める。音声・しぐさ・エージェントといった既存のアイデアに頼らない新たな発想が必要な時期に来ていると考えたい。
3: 登場する全てのアイテムの操作作法を一致させること。ただし、映像コンテンツとしてはそれが魅力を持つかどうかは判断の難しいところであり、今後さらに評価検証が必要である。

 

ここで、1であげた価値観の表現について、今後、考慮すべき要素として『ユーザーエクスペリエンス』という考え方をあげておきたい。映像コンテンツは、あくまでイメージの産物であり、その中に登場するアイテムをユーザーが実際に使うことは、現状では出来ない。イメージとして捉えるコンテンツなのだから、そこで描くべきは、ユーザーが得られるであろう『経験』そのものであるべき。その機器を、いかに使いこなすか、そしてその機器を使うことによって、いかに実りある経験が出来るか‥‥その表現が重要になってくる。その経験の表現はシナリオによって様々に変わることになるが、本質的には『人間の能力をデジタル技術で拡張する』ことに力点を置きたいと思う。デジタル技術を駆使した機器、特に情報機器が人間に対して提供できること、それは、情報のやり取りにおいて通常の能力を超えること。例えは悪くなるが、スポーツ用語の『ドーピング』に近い。デジタル技術が、それを使いこなす人に『情報ドーピング』をもたらし、おとぎ話に登場するような『千里眼』や『地獄耳』など、或いはことわざの『壁に耳あり障子に目あり』などを良い意味で実現するような未来を描きたい。このデザイン目標を明確化しておくために、最後に今回の研究のまとめとして『デジタルドーピング』というコンセプトを提示しておくこととする。



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