2.評価検証

2-5 評価

ここに挙げた7点の未来の情報・通信・AV機器のユーザーインタフェースについて、前述した四つの項目で評価を試みた。

●成分A:操作の実質的な簡便性を表現しているか
1・3・5・6に関しては、明確に操作と呼べる要素は登場せず、表現されているのはシステムあるいはデバイスの利便性の部分である。6に関しては、その操作を特別な操作ツール(ピックアップペン)を用いて表現しているが、やはりシステムの利便性が強調されていると判断できるので、成分Dの項目にて記したい。
2・4・7に関しては、音声としぐさで機器を操作している状況を描いており、あたかも人間を相手に対話しているようなやりとりで表現している。この『人間的な対話』を操作作法とするとき、簡便性という価値観の反映は難しいと思われる。本編にて表現した『操作のための対話』のやり取りが、少なくとも簡便であるとは言い難いのは、ちょっとした相槌や特に意味をなさぬ身振りなどをも含んだ人間的な対話を機器に対して行っているからなのかも知れない。

●成分B:複数の機器の操作方法を標準化しているか
2・4・7の操作方法は、一貫して音声としぐさによる操作で統一している。が、他の機器には音声で操作するシーンが出てこないため、本作品が、操作方法の標準化を強くイメージさせ得るかどうかの判断は難しい。

●成分C:操作作法の表現にアフォーダンスやメタファを活用しているか
1のカード型モバイル端末の操作は、情報を得たい対象に『かざす』ことを基本の作法としている。この『知りたい』対象に『知るための道具』をかざすという操作作法は、『虫眼鏡をかざす』という行為をメタファとしてデザインした。そこで、実際にかざすアイテムも透明素材とし、いかにも覗き込める装置であることをイメージさせ得るように配慮している。
2のスマートウォールTVの操作では、音声とともに『しぐさ』による操作を強調している。しぐさはノンバーバルコミュニケーション要素と呼ぶべきではあるが、人間が経験的に知覚している意味性やルールを活用していると言う点では、アフォーダンスやメタファの活用と目的は同じである。
3のペーパーディスプレイの紙というアナログメディアを模ったデバイスにデジタルデータを表示させるという考え方は、人が慣れ親しんできた『紙の性質』を応用すると言う意味で、直接的な表現ではあるが、メタファを応用したデザインを指向している。
6の姿見コンピュータの操作デバイスであるピックアップペンもまた、アナログなツールを模った操作デバイスにデジタル技術を備えさせるという考え方により、ペーパーディスプレイと同様のメタファ応用デザインを施している。

●成分D:機器を使う時の心理的な要素を考慮しているか
機器やシステムに対する『魅力』の表現はシナリオの内容に拠るところが大きいが、シナリオ作成は筆者の作業の範疇を越えるため、安易に評価することは避けておきたく思う。そこで、ここでは作品中に表現されている機器やシステムの訴求ポイントの説明に止めておくこととしたい。
1のカード型モバイル端末の訴求ポイントは、欲しいと思った情報を、その場で、すぐに入手できるところにあり、これこそがユビキタスネットワーク環境の目指すところでもある。
3のペーパーディスプレイは、デジタルデータの簡易な閲覧および移動に優れていることと、ハードウェアのアナログ感覚が訴求ポイントである。
5の情報ブレスレットは、セキュリティチェックが常態化しているであろう世の中での、デジタルな身分証明の在り方を示すものである。
6の姿見コンピュータは、服飾デザイナーという特別な職業のための専用の装置として描かれており、典型的な『プロ仕様』のユーティリティの表現に徹している。



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