研究の目的

1-2 研究の主旨

いずれの企業のメッセージ映像にも殆ど共通する、来るべき近未来社会についての基本的な認識として『ユビキタスネットワーク社会』の実現があげられる。多くのメッセージ映像はユビキタスネットワーク環境を背景として近未来の社会が描かれており、松下電器の作品もまた同様である。未来の社会においてどのような価値観が生まれ、どのようなライフスタイルに反映されるのか、そしてそこで求められる情報・通信・AV機器やソフトウェアはどんなモノなのか‥‥、それを予測するのは極めて難しい。ただ、いずれの未来においても、社会的な要請のレベルにあるものは変わらずに求められるであろうと筆者は考えている。それはおそらく『ユニバーサル』であること、『エコロジカル』であること、そして『より良いユーザーインタフェースを備えていること』であろうと。その中でも、機器を使った時に『分かり易いこと・使い易いこと・心地良いこと』は、これからのモノ作りにも必ず求められる要素であり、筆者は、映像コンテンツに登場するユーザーインタフェースのデザインにおいても、これらの要素を、近未来に達成されるであろう技術開発予測に照らし合わせた上で表現してきた。

ところで、デジタル化やユビキタスネットワークの成立を背景とした今後のモノの在り方を示すコンセプトに、分かり易さ・使い易さが組み込まれることを前提とし、その表現の場が映像コンテンツである場合、作品中に登場するユーザーインタフェースの良し悪しを、どの様に評価すれば良いのであろうか?
現在、製品のユーザーインタフェースには幾つかの評価手法が確立しており、それがデザインの現場において活用されていることを踏まえて、本研究では、コンテンツの中のユーザーインタフェースを評価することに取り組みたい。
現在の一般的なデザインプロセスにおいて、将来の構想を具体的に表現する手法としては、『プロトタイプモデル』の制作と、本研究で取り上げる『イメージ映像』の制作の、二つの手法が挙げられる。プロトタイプモデルは、製品化に向けて評価検証のためユーザビリティテストなどで用いられ、その内容から製品化に向けた課題抽出が成されるわけだが、イメージ映像には『コーポレートメッセージ』として用いるという意図がある。先に記した様に、映像作品に込めるコーポレートとしてのメッセージは、多くの場合『魅力ある近未来社会を導くシナリオ』であるため、課題抽出ではなく『ハッピーな未来社会到来のイメージ形成』のために用いられる。
映像コンテンツに登場するアイテムやユーザーインタフェースには、製品デザインやプロトタイプデザインとは異なる訴求ポイントがあるからこそ、製品デザインやプロトタイプデザインのための評価検証手法とは異なる新たな評価尺度が見出せれば、以降のコーポレートメッセージ映像のためのデザイン作業の大きな指針となると考えられる。

本研究では、実機ではなくあくまでイメージ上のユーザーインタフェースの評価であることを前提にアンケート調査を実施し、その内容を分析することにより、『使い易さ』を具体的にイメージさせる要素を抽出し、そこから映像コンテンツのインタフェースに見合った評価軸を導き出すとともに、昨年秋に公開された自身の作品を改めて評価し、今後の取り組みに生かせるデザイン指針を明らかにしたい。


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