論文|THESES

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企業イメージ伝達のための映像コンテンツに登場するユーザーインタフェースの表現に関する考察

A study of the representation of user interfaces appearing in the video contents for introduction of corporate message


向井昌幸

MUKAI, Masayuki Lecturer, Department of Product Design




研究の目的

1-1 背景

筆者は、2004年3月末までの企業(松下電器パナソニックデザイン社)在籍時も含め、この数年来、松下電器が作成する『コーポレートメッセージ映像』の作成に携わってきた。そしてそれ以前より、筆者は主にユーザーインタフェースを自身のデザイン活動領域として取り組んできており、その対象は、大まかに分類して二つのジャンルに分けられる。一つは、デジタルスチルカメラやムービーカメラといったコンシューマ製品のユーザーインタフェースのデザイン。そしてもう一つは、本稿で取り上げる『コーポレートメッセージ映像』と呼ばれる映像コンテンツの中に登場する、近未来の情報ライフスタイルや、近未来の機器のためのユーザーインタフェースである。
コーポレートメッセージ映像とは、企業が、未来に向けてどのような指針でどういった活動に取り組んでいくのかについて、それを実現させた社会(多くは、10年ほど先の未来)を舞台に描いた映像コンテンツである。これまでに多くの企業‥‥例えばアップルコンピュータやマイクロソフト、ソニーや東芝といったコンピュータ/情報通信関連メーカーや、NTTドコモなどの通信キャリアが、それぞれに構想する将来像を映像化し、数多くの作品が発表されてきた。NTTドコモによる『MAGIC』と題した一連のシリーズ作品などが代表的な例であり、多くの作品は国内のCEATEC*1や、アメリカでのCES*2、ドイツでのCeBIT*3といった国内外で開催される情報通信分野のショーで発表され、その後テレビCMやホームページ上の映像コンテンツとして活用される。

各企業が、こうしたメッセージ映像を作成するのには幾つかの理由があるが、その一つとして『必需品が行き渡った後の社会での、モノ作りのための目標設定』があげられる。家庭用電化製品の場合、必需品と呼ばれる製品の世帯普及率は殆どが90%を超えているため、メーカーとしては、アナログからデジタルへの変革を切り口に買換え需要を促進する必要があるが、買換え需要だけではジリ貧に陥るだけであり、メーカーにとって必要なのは、新たな必需品を産み出す可能性の模索である。これまでのモノ作りが、物質的な豊かさや、家事労働からの開放といったシナリオを備えていたように、これからのモノ作りにも、さらなる技術開発によって産み出されたモノやソフトやシステムが、魅力ある近未来社会を導くシナリオが必要なのである。コーポレートメッセージ映像とは、企業から社会への情報発信だけではなく、企業自体の活動指針の明確化という目的を備えているのである。

松下電器ではこれまで、2002年に『Maple Adagio』、2003年に『Little Wish』、2004年に『ideas ahead 2010』と、年に一作のペースでコーポレートメッセージ映像を発表してきた。『ideas ahead 2010』は、2004年10月のCEATECで発表の後、2005年時点では、松下電器の総合情報発信ショールームであるパナソニックセンター(東京お台場)などで展示上映中である。
筆者はこの三作品の制作に携わり、作品中に登場する近未来の情報・通信・AV機器やソフトウェアのユーザーインタフェースデザインに取り組み、近未来の情報ライフスタイルを構想しながら、その生活シーンの中で行われる操作の作法を考案するとともに、具体的な操作方法を視覚的に表現する役割を担ってきた。


(注)

*1― 毎年10月に開催される、国内最大の、情報通信とエレクトロニクス製品の総合展示会。2004年の出展社数は728社、来場者数は182,490名。
*2― ラスベガスで毎年1月に開催される全米最大の家電/情報通信機器の見本市。2005年の出展社数は2400社以上。
*3― 毎年3月に独ハノーバーメッセで開催される、情報・通信技術全般を網羅する世界最大級の総合展示会。2005年の出展社数は6270社、1週間の会期全体での来場者数はおよそ800,000人弱。


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