(補注)

*1― 例えば、パオロ・ソレリの「アーコサンティ」やジュディ&マイケル・コルベットの「ビレッジ・ホームズ」、オランダにおける「エコロニア」、等。
*2― ミシェル・ド・セルトー(1980)は、「もろもろの要素が並列的に配置されている秩序」を「場所」とし、一方で、場所に「方向というベクトル、速度のいかん、時間という変数」をとりいれたもの、すなわち「実践された場所」を「空間」とする。さらに、この「実践はいたるところで生きつづけている」が、知は「順路の叙述」から「地図」を作成し、その結果、「地理的場所のシステムが独立してゆき、日常文化の空間物語のなかにうかがえる空間組織はくつがえされてしまった」と指摘する。
*3― 「ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト」については、参考文献(3)に詳しい。神戸芸術工科大学齊木崇人研究室では、ガーデンシティ舞多聞のデザインにあたり、「新・田園都市国際会議」(2001年9月に、つくば市および神戸市にて開催。)でまとめられた18のコンセプトを、次の5つの計画理念として再編成している。
A. 旧ゴルフ場の緑や地形を活かすエコロジカルデザイン
B. 安全で安心できる参加型のコミュニティデザイン
C. 多様な生活スタイルとライフステージに答える多様な住まい
D. 緑ゆたかなゆとりある敷地に美しい住宅
E. 新田園都市の質の高い住環境はコミュニティの共有財産
*4― なお、河野哲也(2003)は、ギブソンの生態学的視覚論をより、「生態学的環境とは、環境と動物自身とがどうじに現れるような実在の水準のことである。この水準において、動物と環境はおたがいに規定しあう相互依存的な関係にある。環境は動物がなしうることをそのなかにふくんでおり、この事実は、エコロジーにおけるニッチの概念によって表現されている。環境中には、動物との関係によって規定される傾向性が存在しており、動物の性質や行為とペアをなしている。」とし、さらに「行為者と環境はつねに循環的な関係にある。行為者である人間は、環境にはたらきかけ、それによって得られる情報によって自分の行動をコントロールする。行為の目的も、自分と環境との循環的な関係のなかで創造されてゆく。行為者は、環境との循環的な因果関係によって自己を形成して成長してゆく。また、環境の方も、動物との循環的関係によって変遷し、ひとつの生態学的な歴史をもつようになる。」とまとめている。
*5― 住宅地の基本設計はほぼ完了していたことになる。よって本スタディでは、住宅地全体の地形や排水計画等もまた、与件として扱うこととした。
*6― ロバート・セイヤーは「ヴィジュアル・エコロジー」という概念により、「複雑な自然のプロセスを視覚化し理解可能なものにする」環境を支持している。参考文献(4)、259。なお、地形もまた、視知覚に影響を及ぼす重要な要素であるが、補注5に述べたように、既にその設計は完了していた。よって、地形模型の作成等その把握に努めるも、与件として扱うにとどめ、調査対象からはずした。
*7― 住宅地の自然環境については、「神戸学園南地区 自然環境調査業務 報告書(平成9年3月、住宅・都市整備公団 関西支社)」「学園南土地区画整理事業 環境影響評価書(平成12年12月)」等の調査報告がある。地形、土壌、生物等の詳細については、それらを参照されたい。なお筆者らは、これらの調査結果は、当該地の自然環境の理解には非常に有用であるが、自然のプロセスの視覚化を検討するには不十分であると判断した。
*8― 「舞多聞みついけゾーン」における法規制として、「都市計画法および建築基準法(用途地域:第一種低層住居専用地域ないし第一種住居地域)」「砂防法」「森林法」「宅地造成等規制法」など。
*9― 植栽の検討については、現在、当該地で見られる樹種を中心として進めたが、一方で、資料に基づき、対象となる野鳥とその食性も視野に入れて進めた。
*10― この2点の共有のあり方は、前者を「自然科学の知の共有」、後者を「「実践された空間」概念の共有」と呼べるかも知れない。なお、この「生態学的環境」の展開の可能性については、参考文献(5)の他、アンリ・ルフェーブルの〔空間の生産〕より着想を得ている。アンリ・ルフェーブル(1974)は、空間認識の三つの概念(三重性)、「空間的実践<生きられる経験>」「空間の表象<思考される領域>」「表象の空間<知覚される領域>」を示し、さらに「〈生きられる経験>、<思考される領域>、<知覚される領域>がたがいに結びあい、その結果として、一定の社会集団の一員である「主体」は、混乱なく一方から他方へと移ることができる。このことが重要なのである。」としている。

 


(参考文献)

(1) 糸長浩司〔パーマカルチャー〕、シリーズ地球環境建築 専門編 1-地球環境デザインと継承-、彰国社、2004、94-97
(2) ミシェル・ド・セルトー=著、山田登世子=訳〔日常的実践のポイエティーク〕、国文社、1987
(3) 齊木崇人・他(2005)〔新・田園都市の実験-神戸「ガーデンシティ舞多聞」みついけプロジェクト-〕、神戸芸術工科大学紀要 芸術工学2004、2004、82-109
(4) Sim Van Der Ryn+Stuart Cowan〔Ecological Design〕、Island Press、1996/シム・ヴァンダーリン+スチュアートコーワン=著、林明男・渡和由=訳〔エコロジカル・デザイン〕、ビオシティ、1997
(5) J. J. ギブソン=著、古崎敬・他=訳〔生態学的視覚論〕、サイエンス社、1985、140
(6) 前掲(5)、146
(7) 河野哲也〔エコロジカルな心の哲学-ギブソンの実在論から〕、勁草書房、2003、11
(8) (財)都市緑地技術開発機構=編〔都市のエコロジカルネットワーク〕ぎょうせい、2000
(9) 長瀬安弘〔認知マップによる森林ボランティアの森林の認知と評価に関する研究-森林ボランティア『サン・フォレスター』を事例として-〕、日本都市計画学会学術研究発表会論文集37号、1999、337-342
(10) アンリ・ルフェーブル=著、斎藤日出治=訳〔空間の生産〕、青木書店、2000

 

研究協力者
本報告にあげた調査、提案については、以下の方の協力があった。ここに記し、謝意を表す。
藤林智子    金子尚志    幡 知也    石井清巳    杉村典昭    樋口真司
平野奈々    安井沙永子    豊崎寛樹    大山郁子    野々村真輔    安田友也


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