5.エコロジカル・ネットワークの構想-提案

上述の調査結果を踏まえ、ここに提案するエコロジカル・ネットワークを構想した。ここでのエコロジカル・ネットワークは、「地形をできるだけ残し、雑木林の魅力を考え、野鳥が飛来し、多種多様な生物の生存に配慮した生活空間づくり」を目標としている。住宅地の全体にわたっては「緑のコリドー(回廊)の形成」を考え、個別の敷地ではそれぞれの地形や植生の特性を生かした建築デザインの提案である。


図9-3つのコリドー

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図9-3つのコリドー


図10 -造成による土地改変とコリドーの配置

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図10 -造成による土地改変とコリドーの配置


表1-各コリドーの特徴

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表1-各コリドーの特徴


5-1 緑のコリドーの提案

5-1-1 3つのコリドー
広域的に、自然のポテンシャル(潜在能力)を高めること-そのためにまず、本住宅地において(そして、本住宅地を基点に)樹林環境を「保全」「再生」し、生物多様性に富んだ環境形成を目指す。生物多様性への配慮として、生物の生存に係る様々な空間(生物の諸活動、例えば営巣、捕食、移動等のそれぞれに要する場所)を確保したり、創出する必要がある。特に市街地においては、マスとなった個々の自然環境をつなぎ、総体として豊かな環境形成を行うことが求められる。そこで、その空間として、「100年の森」「住まいの森」「そよぎの丘」の3つのコリドーを提案する(図9)。

[野鳥の森-コリドーの基点]
敷地南西部には、既存の調整池と、周辺のコナラやヤマモモ、アカメヤナギ、エノキ、ヒサカキ等からなる樹林により構成される学園南緑地(以下、野鳥の森)がある。この「野鳥の森」は、野鳥のえさ場、水飲み場となるだろう。連続する三ツ池川は、下流の山田川へ、そして周辺の市街地へと続く。ここを基点とし、住宅地を横断して、敷地北東部の樹林地まで連続し、餌場、移動の空間として機能する次の3つの「コリドー(回廊)」を整備する。

[100年の森]
現在のコナラ大径木を中心とし、100年後まで、今と変わらず、野鳥の森から敷地北東に続くコリドーと住環境を形成する。50年後には、100年生コナラの樹林帯となる。

[住まいの森]
野鳥の池と敷地北東部の樹林をつなぐコリドー。居住者の生活の歴史と共に成長する森。コナラやアカマツに加え、コバノミツバツツジなどの花木、実のなる樹を植え、春には花の色を愉しみ、秋には赤い実を求める野鳥を観る。

[そよぎの丘]
海からの風を受け止め、そよ風に変えてくれる樹林帯。野鳥の森(学園南緑地)と敷地東部に位置する商業施設内緑地を連結するコリドー。

これら3つのコリドーは、主に次の2点から設定した。一つは、「水平方向の連続性」で、個別の住宅地に含まれる樹林の、周辺地域や残存樹林との連続性を確保することを意味する。参照した情報は、残存樹林の状況(その樹種構成やヴォリューム)、残存樹林と造成緑地の関係(図7、図8)、土地利用(法規制等)である*8。もう一つが、空間の「断面の構成」である。造成後の地形において、里山の尾根や谷、草地を保全ないし創出することを意味する。尾根部は、景観上、重要な役割を担うが、風当たりも強く、乾燥した場所である。谷地は、逆に湿潤な場所となる。また、地形改変というプロセスを跨いで、その場所の記憶をつなぐことも考慮する必要があろう。そこで、造成前後の地形断面や残存樹林の状況等を参照した(図10)。また各コリドーは、上記2点の他、「表1」中に示した敷地の特徴を有しており、これらもまた、与件に含まれている。
以上の事柄は、後述する管理方針や整備項目の検討にも反映させる。



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