報告|REPORT

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エコロジカル・ネットワークの構想と提案 -「ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト」における試み-

A Conception of Ecological Network−A Case Study of Ecological Houses in “Garden City MAITAMON - MITSUIKE Project” in Kobe.


長瀬安弘

NAGASE, Yasuhiro Former Research Associate, Department of Environmental Design


小玉祐一郎

KODAMA, Yuichiro Professor, Department of Environmental Design


宮岡  大

MIYAOKA, Futoshi Kodama Research Office, Research Associate


蓮井睦子

HASUI, Chikako Kodama Research Office, Research Associate


下田あづさ

SHIMODA, Azusa Research Associate, Department of Environmental Design


内山 忠

UCHIYAMA, Tadashi Research Associate, Department of Environmental Design




1.はじめに

1960年代以降、環境の様々な問題に対する意識は高まりを見せ、エコロジー運動が発祥し、さらに1980年代以降、「サスティナビリティ」を求める運動が展開されてきた。建築や都市計画の分野においても、1960年代後半から「エコロジカル・デザイン」の試みが進められ、議論や実践が蓄積されている*1。今ある自然資源のストックを評価して進める住宅地開発の手法が進められており、本報で提案する環境共生住宅は、「環境の保全」「周辺環境との融和性」「健康とアメニティ」の3つの条件を満たすことを目標としている。
ところで、このような環境への取り組みにおける視点の一つに、「近代的な分業体制は、知識と技術を専門分化しすぎ、自分たちの暮らしをつくる自立・自律性を奪ってきた」ことがある(1)。この視点は、人の暮らしに関するあらゆる専門家が各々に作成した「図式」が、それぞれに分化した状態にあることを指摘するものと理解される*2(2)。このことは、空間操作に携わる異なる専門性、例えば、建築や都市計画、ランドスケープといった専門分野が、それぞれに知の蓄積、技術の開発を目指すその一方で、それぞれに分化した状態から一つの「空間」へと転化することが求められていることを意味すると考えられる。つまり、異なる専門性の共同のあり方もまた、「エコロジカル・デザイン」を進める上での、一つの課題だといえる。
本報は、以上の背景を踏まえ、異なる専門家の共同作業からなる環境共生住宅の計画や設計のあり方を検討し、提案することを目的としている。その内容は、「ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト」*3(3)の計画理念に基づいて行われた「エコロジカル・デザイン」に関連する調査と提案からなる。


2.「エコロジカル・デザイン」の方法

2-1 自然科学の知に基づくデザイン

現代のエコロジカル・デザインの先駆者の一人、シム・ヴァンダーリン(1996)の著書によれば、「エコロジカル・デザイン」は「自然のプロセスと統合することによって、環境への破壊的影響を最小化するあらゆるデザイン形態」と定義されている(4)。同書は、次の5つの原則を示している。

第1原則:solutions grow from place(場所から答えを導く)
第2原則:ecological accounting informs design(エコ収支がデザインの方向を決める)
第3原則:design with nature(自然のしくみに沿ってデザインする)
第4原則:everyone is a designer(誰もがデザイナー)
第5原則:make nature visible(自然を可視化する)
ここで述べられる原則のうち、前者の3つは自然科学に根ざした知識がデザインを決定する要因の一つであることを示していると理解される。第4原則では、デザインの決定が経済的要因、政治的要因に左右される特性から、居住者が決定のプロセスに参加する「コミュニティ・デザイン」が重要とされる。また、第5原則は、エコロジカル・デザインにおいては、自然科学の知を基礎としながらも、同時に、自然のプロセスを可視化することを重視しており、それが「私たちの行動から生まれるエコロジカルな帰結をも知らせてくれる」とする。
筆者らは、各々が有する自然科学の知識をもとに(自然科学の手法を用い)、対象地の自然環境を調査し、住宅地の自然環境の計画(植栽計画等)、環境共生住宅の設計(建築のデザイン、工法等)の、具体的な提案、つまり目に見える形での提案を行うことを前提として進めた。具体的には、まず自然資源について文献調査、現地調査により把握した。次いで、調査結果を踏まえ、住宅地全体のコンセプト、自然資源を高める方策、そして、これら自然資源を与件とした住宅設計案の作成を行った。
なお、第4原則の「コミュニティ・デザイン」については、プロジェクト全体との関係を考慮し、作業プロセスから除いた。


2-2 生態学的アプローチ-「生態学的環境」への配慮

自然科学の知識をもとに計画・設計のあり方を検討する一方で、筆者らは、J. J. ギブソン(1979)の生態学的なアプローチ、特に「アフォーダンス」の理論に着目した。J. J. ギブソンは、人間による自然環境の改変について、次のように述べている。

人類はなぜその環境の形や物質を変えてきたのだろうか。それは、環境が人間にアフォードするものを変えるためにである。…(中略)…
これは新しい(new)環境-自然環境とは区別される人工的環境-ではなく、同じ古い環境が人類により改変されたのである。あたかも二つの環境が在るかのように、自然環境と人工的環境を分離することは間違っている。人工物は自然の物質から作らねばならない。またあたかも物質的産物の世界とは別個に精神的産物の世界が存在するように、自然環境と文化的環境を区別することも同じく間違いである。(5)

…我々が対象を見て知覚するものは対象の性質ではなく、対象のアフォーダンスであると、主張したい。(6)

行為者は、自身の住環境が人工物からなっているのか、自然物であるのかという区別無く、環境がアフォードするもの(供給する、与えるもの)を知覚し、行為を選択する。 筆者らはこの行為者であるユーザーの「生態学的環境」*4(7)に着目し、ユーザーが環境において、どのような知覚情報(主として視覚情報)を得て、目的を創り、行動をコントロールするのかという視点を、作業プロセスに取り入れ、生態学的アプローチの可能性を検討した。具体的には、自然資源に対する行為のパターンを想定し、さらに個別の敷地においてはその行為のパターンを引き受け、ライフスタイルを作成し、設計を進める上での与件とした。


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