6.物づくりを教える難しさ

どれほど売れたかという点でいえば、キャンドルなどの小物は額も手頃なため、予想以上に売上げを伸ばした。シルクプリントのソックスは完売。また、販売には結びつかなかったが、木工イスやバックにも何件かの問い合わせがあった。
しかし本研究は教育の観点にたつため、売れたかどうかという単純な結果より、販売体験から一人ひとりが何を学んだかに注目したい。そういった意味で、学生の創作過程において販売体験が非常に効果的な刺激になることは、今回確信するところとなった。しかし、この体験が参加した学生たちのなかに何を残し、彼らのクリエーティビティにどう影響するのかは、少し長い目で今後の作品づくりを観察していく必要があると思われる。
先に、「その時々の時代や社会の要請をうまくとらえ、新しいかたちに表現することがデザインである」と表したが、厳密にいえば、時代や社会の“どんな"要請を“どう"とらえるかは、つくり手としての学生個人の問題である。展示販売会は時代や社会のひとつの縮図であり、そういった「場」から何を自分のものにするかは、まったく個人の裁量の範疇なのである。
さらに、教育の場にいる私たち教員に何ができるかとなると、話はいっそうややこしくなる。単に「場」からの学び方のハウツーを教えるのではなく、適切な(何を持って適切とするかは、これがまた難しいわけだが)「場」を与えることに尽きるのではなかろうか。そして各自が、「場」において自分の作品がどうあったかを考える環境を用意するということである。
私たちは決して、過度に学生たちの思考や感性に立ち入るべきではない。学生たちに質問されるなど、もし何か意見を求められたとしても、あくまで一教員の参考意見ということを強調し、慎重にアドバイスの範疇にとどまるべきである。彼らが自分で考える過程に私たち教員が色づけしたり、ある方向に誘導してしまうのは、学生たちの個性の萌芽を摘むことであり、それは極力さけなければならないと考える。
ここに、デザイン教育の難しさがあるといえよう。


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