図1-1 総人口,年齢3区分別人口および 年齢構造係数:中位推計  (国立社会保障・人口問題研究所)

Larger

図1-1 総人口,年齢3区分別人口および 年齢構造係数:中位推計   (国立社会保障・人口問題研究所)

1|背景

1-1 人口減少期と少子高齢化を迎えて


終戦から60年が経過しようとしている現在、日本は人口減少期と少子高齢化という大きな局面に対峙している。国立社会保障・人口問題研究所が2002年1月時点で推計した日本の将来人口予測によると、2007年の1億2,740万人を境に人口減少期に入り、2027年には1億1,970万人、そして2050年頃には1億人を割り込むとされている。これは1965年頃の人口に匹敵する。しかし、65歳以上の老年人口は増加の一途を辿り、いわゆる団塊の世代が老年期を迎え始める2012年には、全人口の23%を占めるとされている。そして2040年には33%、つまり国民の3割を老年人口が占めると予測されている。(図1-1)
一方、戦後の住宅政策は、当時の絶対的な住宅不足の解消を目的として行われてきたが、その結果、1973年には、全ての都道府県において1世帯当たりの住宅数が1戸を超えた。その後、緩やかに上昇し、1998年では1.15戸前後となっており、住宅の供給過多の現状を示している。当然のことながら、空家の数も上昇しており、1998年の時点では576万4,100戸となっている。 人口が減少し始めることによって、現在の住宅供給過多の状況は更に加速することが予測される。その結果、質の高い居住環境に人が集まり、低いところでは過疎化が進行し、地域間格差が顕著に現われ始める。現に、戦後の高度経済成長期に開発された、郊外のニュータウンや分譲地の中でも、利便性が悪く、ショッピングエリアやバスターミナルから離れた周辺部においては、空地や空家が増加し、地域コミュニティの崩壊が表面化しつつある。一方で、宅地が売却され、再分譲される際にはその土地が2分或いは3分割され、まちなみが過密化し、居住環境の質の低下をもたらしている。


図1-2 神戸 須磨ニュータウンのまちなみ (写真:齊木 1990.11)

Larger

図1-2 神戸 須磨ニュータウンのまちなみ (写真:齊木 1990.11)


1-2 郊外のニュータウンが抱える課題


郊外のニュータウンが抱える課題として、1)コミュニティのつくられ方、2)住宅デザイン、3)住民の居住環境に対する意識、の3項目が挙げられる。(図1-2)

1)コミュニティのつくられ方
現在、新しく住宅が供給される際に住民が決められる手段は、コープラティブ方式などの供給例を除いては、戸建、マンションに関わらず、抽選によって決められる場合が多い。その結果、新しく入居する住民は、近隣に住まう人に関する情報が全く無いままに転居することになる。運良く気の合う隣人に恵まれた場合は問題無いが、そうでない場合、隣人とのコミュニケーションを絶ち、それぞれが個に撤退した生活をおくる羽目になってしまう。このことは、結びつきが強く、持続可能性を持った地域コミュニティを生み出すことに対する妨げになっている。 また、画一的な宅地や住宅を一斉に供給し続けた結果、居住者の年齢層に幅を持たせることができず、初期に開発された郊外のニュータウンや分譲地では、住民が一斉に高齢期を迎え、安心・安全面への不安を抱えながら生活している人々が少なくない。 住宅を供給する側も、「地域コミュニティをつくる場を提供する」という概念は薄く、開発した宅地の完売を最終目的とし、達成した時点で住民とは無関係の存在となり、肝心の「地域コミュニティの熟成」は住民任せになってしまっている。

2)住宅デザイン
戦後、住宅地が急ピッチで開発されていくに従い、生産性と圧倒的な経営体制を誇るプレハブメーカーが急速にシェアを拡大してきた。しかし、プレハブメーカーが提案してきた住宅デザインの多くは、外観においては欧米スタイルのコピーに終始し、地域文化や風土性を省みずに提案されてきた。プランニング面においても、各メーカーに基本プランが定められており、多様な家族構成やライフスタイルに柔軟に対応してきたとは言い難い。また、個々の宅地の中だけを考慮してプランニングが行われてきた結果、周辺環境や隣家同士の空間的なつながりの無いまちなみが構成されている。住宅の施工の際に用いられる建材も施工性・加工性が追及され続けてきた結果、住宅そのものの外観が陳腐化し、年月を経るに従って、住宅と周辺環境の質の低下をもたらしている。


図1-3 奈良県稗田の環濠集落 (写真:齊木 1991)

Larger

図1-3 奈良県稗田の環濠集落 (写真:齊木 1991)

3)住民の居住環境に対する意識
日本国憲法第29条によれば、「1.財産権はこれを侵してはならない」とし、「2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とされている。財産権の中には土地所有権も含むと見なされているが、つまり公共の福祉に反しない限り、自分の土地には自由に建物を建てても構わないという風潮が国内で定着している。これにより、個人が自らの利益や要求だけを考えて住宅を建設することが主流となり、まちなみの質の低下と過密状態を引き起こしている。
また戦後、「住宅」が「産業」と見なされるようになって以来、自家用車や家電と同じような感覚で居住環境が購入される風潮も定着している。本来、住まうところを獲得するという行為は、その周辺環境を考慮した上で行われ、さらにその地域コミュニティの一員になるという課題を含むものである。しかし、実際は宅地或いは住宅単体の内容のみが重要視されて獲得される傾向が強い。

戦後、日本で行われてきた居住環境づくりや地域コミュニティづくりの多くは、戦前まで培ってきた「地域文化や風土に基づいた住まいづくり」「集まって住む」「永く住み続けるための工夫」といった経験がほとんど生かされずに提案されてきたと言ってもよい。(図1-3)

神戸「ガーデンシティ舞多聞」みついけプロジェクトでは、現代の日本の郊外住宅地が抱える問題に対し、歴史的な経験を生かしながら、持続可能なコミュニティづくりを目指した、新しい住まい方への提案を行っている。




 HOME

 page top